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第36話
結局、匡から貰うはずだったプリントは、明日匡が学校に持ってきてくれることになって、俺と優生君は寮まで送ってもらい、匡と別れた。
「匡は優しいね。他人の為に怒れるんだよ。」
「······あのね、千紘君。」
「うん、何?」
廊下を歩いていると優生君が突然立ちどまった。振替って優生君を見ると恥ずかしそうにもじもじしていたけれど、少し待つと顔を上げて真剣な目で俺を見た。
「ぼ、僕、匡君が、好きかもしれない······!」
「え、そ、そうなの!?わあ!いいないいな!好きな人が出来たんだね!」
「千紘君はっ!?」
「え?」
純粋に嬉しかったのに、優生君は切羽詰まったように言葉を投げてくる。
「千紘君も匡君のこと、いいなって思ってるんじゃないの?優しいってよく言うし······。」
「······いや、友達としては素敵だなって思うけど、そういう目では見てないよ。恋人になって欲しいって思ったことは無いかな。」
「嘘だあ!」
突然優生君がそう言って来た。いや、嘘じゃないし。
「この事で嘘吐いて、俺に得はないよ。だから嘘じゃない。」
「······狙ってない?」
「狙ってないよ。寧ろ応援してる。」
そう言って小さく笑うと、緊張していたのか優生君はクシャりと笑って、それから泣きそうになる。
「泣かないで」
「だ、だって、なんか······っ」
「匡に伝えようよ。他の人に取られる前にね。」
そう言うと恥ずかしそうに俯いて、けれど確かにコクリと頷いた優生君。
よし、俺は全身全霊で応援するぞ。
「なんなら今から行く?」
「だめ!それはダメ!心の準備が出来てない!」
「あ、ああうん、わかった。ごめんね。」
凄い剣幕で拒否されて、思わずたじたじになった。
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