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第37話 匡side
寮に戻って制服を脱ぎ捨てた。
オメガとベータの寮に入ったことがないからわからないが、ここの部屋、アルファの寮の部屋は広い。
「つっかれたぁ······」
久しぶりにあれだけ本気でキレたな。
元は俺だってあの先生と同じような考えだったのに、友達にオメガがいて、守ってやらないとって思うようになってから、考えが変わった。
「早く気づけてよかった。」
食事をとるのは面倒で、部屋の中にある冷蔵庫からゼリー飲料を取り出して一気に飲んだ。
それからしばらくして風呂に入って髪を洗う。泡をシャワーで流すと現れるアッシュに染めた明るい髪。鏡に映る自分の姿に乾いた笑みが零れる。
これは全て親への反抗。
俺を正そうと、自分達の引いたレールの上を歩かせるようにと、必死だったあの親への。
だから、言いなりになっている"兄貴"が、俺にとっては煩わしくて仕方が無い。
兄貴があんなのだから、俺まで矯正させられるんだ。
嗚呼、でもなんだ。
「──くだらない。」
急いで顔と体を洗って風呂から出た。
スウェットを履き、長袖のTシャツを着る。髪を乾かすのが面倒で、首にタオルをかけたまま机の上に置いてあったノートやプリントの整理をした。
明日は千紘にこのプリントを持って行って······ああそうだ。ノートはコピーを撮ってやった方が、あいつも気を使わなくて済むし、見やすいかもしれないな。
「コピー機、確かあったよな······。」
板書を書いたノートを持ち部屋を出る。確か食堂の近くに置いてあったはずだ。
そこまで続く廊下を歩いていると、「あれ、赤目君じゃーん」とさっきも聞いた声が聞こえてきて「げっ」とついつい声が出た。
「げっ、て何?さっき助けてあげたのにぃ」
「頼んでねえけど」
ニヤニヤしながら近づいてきた高良······先輩。
俺の肩に手を置いて「何してんの?」と聞いてくる。
「······ノート、コピーしようと思って。」
「なんで?」
「千紘に渡すため。」
「ふーん······あ、千紘って言った?今。え、何それ。そんな呼び方してなかったよね?」
「は?さっきも呼んでたけど。」
本当のことを言うと高良先輩は絶望したような表情で俺を見ては、肩に置かれていた手に力を入れて「どうしてかな?」と笑顔で聞いてくる。
「千紘がそう呼べって」
「はぁぁぁん?」
「うるさい、耳元で叫ぶな。」
そう言って手を叩き落とす。高良先輩はジトっとした目で俺を見る。
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