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第40話
俺が千紘を好き?いやいや、友達としてならまだしも、恋愛の好きを俺はまだ知らない。そもそも1週間やそこらで、初めて会った奴を好きになれるのか?
「好きなの!?」
「好きじゃねえし。」
「何で?仲良さそうに見えるよ。」
「そりゃあ、友達としては好きだからな。そもそもな、出会ってまだ1週間くらいしか経ってないんだぞ?それなのに誰を好きになれるってんだよ。」
そう言うと、あからさまに傷付いた顔をした優生。何でお前がそんな顔すんの。掴まれていた腕から手が離れていって、優生は俯いた。
「ごめん、やっぱり話ない。」
「はぁ?」
「ごめんね、······ほら、千紘君が寂しがるから、教室戻ろう。」
よくわからないけど、優生がそれでいいならいい。
と、いうより薄々感じていた。
今のこの態度から、優生はきっと俺の事が好きなんだろうなって。
でも気付かないふりをした。
俺にとって今の3人でいる関係は楽しいから。それが崩れてしまうのは嫌だ。
「おかえりー!どこ行ってたの?」
笑顔で手を振ってそう言う千紘は、何が嬉しいのかずっとニコニコしている。
「ちょっと廊下に出てた」
「ふーん······?」
「······千紘君ごめん、ちょっも体調悪くて、せっかく学校来たけど先に帰るね。」
「えっ、今日の放課後は······?」
「うん、ちょっとごめん······。」
そう言って優生は帰って行った。教室からいなくなった途端、千紘に腕をガシッと掴まれる。
「優生君に何言ったの!?」
「······何で俺が悪役なんだよ。」
「そうじゃないの?」
「······そう、かもしれねえけど。」
さっきあった事のせいかもしれない。そう思うと否定はできなかった。
「······何話してたの」
「俺が、お前のことが好きなんじゃないかって聞いてきたから、1週間で誰を好きになれるんだって、言った······。それだけ。」
「······アウト」
千紘が机に項垂れて、一言そう言った。
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