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第41話 優生side

最悪だ、あんなふうにフラれるなんて思ってなかった。まだ告白も出来てないのに。 学校の中庭のベンチに力なく座りながら、涙が頬を伝うのも拭えずにいた。 「······千紘君が急にあんなことするから······っ」 僕が悪いんじゃない。千紘君が悪いんだ。 そう思うと悔しくなって、唇を噛む。 「あれ、1年生?泣いてどうしたの?」 「っ!」 声をかけられて慌てて頬を拭った。顔を上げると綺麗な顔で柔らかい雰囲気をした先輩らしい人が立っている。 「どうしたの?虐められた?」 「ぁ、いや······」 「うーんと、君顔がすごく綺麗だから、オメガかな?それともアルファ?」 「······お、オメガです。」 「そう。俺もオメガなんだぁ。もしかして学内でレイプされちゃった?」 慌てて首を横に振ると、あははと笑って隣に腰かけるその人。 「あ、あの、お名前は······?」 「俺は安達 (れい)、2年生だよ。君は?」 「小鹿 優生です。」 安達先輩はとてもいい人。 「オメガ同士だし、なんでも相談乗るよ。」と微笑んで言ってくれた。 だから、さっきあったことを説明すると呆れたように溜息を零した。 「それは、君も悪いんじゃない?」 「うっ······」 「告白してたら、今みたいなもやもやした気持ちはなかったと思うけど。」 「······それは、そうなんだけど······。でも千紘君はズルいんです。ここに入学してから初めて発情して、その時相手をしてくれたアルファが高良先輩なんだもん。幸せものです。先輩は優しいから。」 そう言うと、空気がガラッと変わった。 ガシッと肩を痛いくらいに掴まれて、安達先輩の顔が目の前に迫る。 「高良先輩って言った······?高良悠介?生徒会の?」 「あ、は、はい······。1週間くらいずっと、お世話になっていたみたいで······。」 そう言うと、何かを考え出した先輩は、しばらくして俺を笑顔で見た。 「ねえ、千紘君に腹が立ってるんだよね?」 「は、はい······。」 「ちょっとだけ、痛い目見せてあげよう。俺も協力するから。」 優しく笑う先輩が少し怖かった。 何も考えないで勝手に行動してしまう千紘君が腹立たしかった。 だから、今度は首を縦に振った。

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