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第45話

しばらくお互いに唇を貪りあった。 唇が離れて、腰が抜けズルズルと床に座り込んだ俺を見下ろす会長。 「······松舞千紘、だったな。」 「っ、は、はい······」 腰が抜けて立てやしない。 足先から指先まで震えている。 「どうやら······運命の番ってやつらしいな。」 「え······?」 運命の番?俺と、会長が? 胸がドキドキとして、会長から離れようとしたのに体は動かないし、壁があるからこれ以上下がれない。 「何逃げようとしてるんだ。とにかく床は汚い。こっちにおいで」 「わっ!」 会長に抱っこされて、少し移動するとソファーに降ろされた。 至近距離で嗅いだ大好きな匂いが、直接脳に届いたみたいに思考が蕩けて、何も考えられなくなる。 「松舞は俺の弟と確か同じクラスだな。」 「やっぱりご兄弟でしたか······。って、えっ?何で同じクラスって知って······?」 「弟の事は管理してる。もちろん、その周りにいる人間もな。」 そう言って手前のソファーに座った会長は、俺をじっと見る。目が合うと体が痺れるみたいで、この感覚に慣れない。 「まさか弟の同級生と······」 「ぁ、あの、運命の番って······あれは、都市伝説か何かなんじゃ······?」 「なら今自分の体に起こっていることについて説明できるか?」 そう言われると不可能で、口をつぐんで俯いた。 「仕方ない。運命の番は魂で惹かれ合うんだ。こればかりは逆らえない。番になるか。」 俺は運命の番っていうものに少し憧れていた。 だから、そういう相手が見つかったことが嬉しくて仕方が無いのに、会長はそうでも無いみたいだ。 「でも、番にならなくても、いいんですよね······?会長は、嫌なようだし。」 「俺は別にオメガなら誰でもいい。」 「······じゃあ、番になりたくないです。」 そう言って足腰に力を入れて立ち上がる。 頭を下げて逃げるみたいに生徒会室を出た。 まだ説明会はしてるだろうか。急いで教室に行くと沢山人がいた。まだ終わってはいなかったみたいで多くの目が俺を見る。 「千紘ちゃん、大丈夫?」 「······っ」 「えっ!」 高良先輩に優しくされると泣きそうになる。 つい唇を噛んで泣くのを耐えていると、頭を撫でられて「話は後で俺がしてあげるから、今日は休もうか。」と教室から連れ出してくれた。

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