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第49話 千紘side
高良先輩に寮まで送ってもらって、俺は部屋で泣き続けていた。
運命の番に会いたかったはずなのに、こんなのって酷い。
元々ここに来るまでは発情期も来なくて、もしかしたらオメガって診断されたのは医者の間違いかもしれないとすら思っていたんだ。
それが、発情期がきて、今度は運命の番だって言われても、困惑するだけ。
見つかったことに対して喜びあるけれど、だからってそれが初めて会う人なんじゃ、運命の番っていう実感も湧かないし、俺を大切にしてくれる保証なんてない。
本当に······高良先輩が運命の番ならよかった。それならさっき番になろうって言われた時、迷うことなく頷いたのに。
「辛い」
胸の中がジクジクして、どうしたらいいのかも分からずベッドの上で丸くなる。
お母さんには申し訳ないけれど、気持ちの整理がつかないから、明日は学校を休もう。
その事を匡にSNSのメッセージで伝える。直ぐに返事がきて「話は聞いた。ゆっくり休め」って優しい言葉をくれた。
涙の勢いは増して、制服が皺になるなぁと思いながらもそのまま目を閉じる。
泣くのを辞めたい。明日起きたら目がパンパンに腫れてるかも。それでも休むから関係ないか。
「家に帰りたいなぁ。」
1回家に帰って落ち着きたい。
母さんに話さなきゃいけないことが沢山ある。
色々と考えていると、いつの間にか眠りに落ちていた。
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