「まだ、番にはならないんだよね······？」 「そればかりは松舞の許しがないと無理だし、なにせ番になれるのは発情期での性行為中だけだ。条件が揃わない限り番になれない。」 「······そうなった時は邪魔していい？」 「迷惑だと言ったはずだが。」 イラついたような表情で足を組んだ会長。 俺を蔑むみたいな目で見る。 「やっぱり今日は気分が悪い。パンプキンスープは食べに来るな。」 「行かないって言ったよ。」 「そうか。なら早く教室に行け。今はお前の顔を見ていたくない。」 「ストレートに言うよね本当。俺も会長のこと見てたくないけど。」 立ち上がって部屋から出ると、副会長がまだそこにいて「偉成を怒らせるな」と文句を言われてしまった。 「怒らせたつもりは無いけど」 「あいつの狙ってるオメガを奪おうとしてるんだろう。やめておけ、あいつには敵わない。」 「俺はやめないよ。」 そう言うと副会長まで鼻で笑ってきやがった。腹が立つけど、この人達はこういう人種なんだと思うことにして無視をした。 生徒会室を出ると深い溜息が自然と出た。 体に入っていた無駄な力が抜けて、どっと疲れた体を休ませてあげたくて寮に戻りたくなった。 「高良君！」 「えっ······安達君か。」 「どこ行くの？教室戻ろうよ！」 「あー······そうだね。」 安達君に腕をひかれてダラダラと教室に戻る。 サボってた分、ちゃんと頑張らないとダメだもんな。 「そういえば、昨日もオメガ達に話をしたあと教室に戻ってこなかったよね。あの······松舞千紘が気になるの？」 「何で千紘ちゃんのことを知ってるの？」 「昨日少しだけ話したからだよ。」 確かに、千紘ちゃんは昨日安達君の隣に座っていたような気がする。 「あのオメガがいいの？何で？」 「千紘ちゃんは可愛いから。」 「俺だって顔はいいと思うけど？」 「あの子はそういう事を言わない。」 千紘ちゃんはまだオメガであることを受け入れていないようにすら見える。だからか、アルファに媚を売ったりしないんだ。 千紘ちゃんはずっと綺麗なままでいて欲しい。 今のまま、会長なんて選ばないで、俺の元に堕ちて来てほしい。