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第55話
保健室に着くまではお互いに無言で、そこに着いてからはハンカチを渡されて、驚きながらもそれを受け取り、涙を拭かせてもらった。
「で、何してた。」
「······授業受けてたんですけど、ちょっと······。」
「何かあったのか?もしかして運命の番の事について悩んでいたのか?」
「それもあるけど、それのせいじゃないです。」
ハンカチを返して、落ち着こうと深呼吸をする。
「何だ、喧嘩でもしたか?」
「······喧嘩じゃなくて······知らない間に、友達を怒らせたみたい。」
「そうか。それは仕方がない。さっさと謝るか何をしてしまったのかを聞くべきだな。」
「そんなことわかってますよ。」
「なら何でそうしない?」
ぐっと押し黙るしかなかった。
確かにそうだ。なんで俺は直ぐに聞かなかったんだろう。ただ動揺しただけで、その先に進もうとしなかった。何をしたんだろうと考えただけだった。
「俺は何事も後回しにすることは嫌いだ。」
「それは会長だけです。俺はそれよりも先に考えてしまいます。」
「考えて答えが出るのか?出なかったから今そうなってるんだろう。」
わかってることを指摘されると気分が悪い。この人は高良先輩みたく優しくないから、少し苦手だ。
「少しくらい優しくしたらどうですか?」
「優しく?俺にメリットがあるのか?」
「少なくとも俺はあんたの運命の番みたいだし、選ばれる努力くらいすれば!?」
不安が爆発して自分の都合だけを考えた言葉を吐いた。
「何だ。チヤホヤされたいのか?」
「そういう事じゃない!」
「ならなんだ。お前の言葉はそうしてくれと言っているようにしか聞こえない。」
「っ、す、少しくらい、俺の気持ちを理解してくれたっていいでしょ······?」
そう言うと首を傾げて「今のお前の気持ちをか?」と聞いてきた。
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