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第57話 匡side
千紘が授業中に泣き出して教室を出てしまったから心配していた。
やっぱりまだ、兄貴と高良先輩のことで悩んでるんだと思って。
なのに、話を聞いてみれば悩んでいたのは優生との事だった。
怒らせてしまったと慌てふためいているけれど、俺はそれどころじゃないだろうと正直思う。
「だってさ、俺の大切な友達だもん。俺が何かをした覚えはないから、近くにいた匡なら分かるかなって。」
「知らねえよ。本人に聞けばいいだろうが。」
「······お兄さんと同じこと言わないでくれる?」
「兄貴に会ったのか。」
「さっき廊下で会って保健室まで連れていってくれたかと思えば、腹立つことばかり言うから逃げてきた。」
「それが正解だ。よくやった。」
あいつには俺も腹が立つ。自分は間違ってないと思っているところや、あの傲慢な態度が。
「あいつを選ぶくらいなら高良先輩にしとけ」
「俺も······高良先輩がいい。」
「いいか?番の契約したならもう戻れない。解消はできるが、そうすればオメガは死んでしまう。だから······簡単には決めるなよ。」
「わかってるよ。」
ふんっと顔を背けた千紘は、そのまま優生の方を見て泣きそうな表情になり俺に視線を戻す。
「どうしよう······」
「······さあなぁ。」
「このまま、このまま戻れなかったらどうしよう······っ!」
「大丈夫だって、ちゃんと戻れるから。」
保証はしないけど、俺も2人には仲直りしてもらいたいし、俺だって何の蟠りもなく一緒にいたいと思う。
「あ、実家にいつ帰るんだっけ?」
「今日寮に帰ったらすぐだよ。」
「······高良先輩には言っておいた方がいいんじゃねえか?」
「えー、何で?勝手にしろって言われない?」
「むしろお前が勝手にいなくなると不安になると思うけど」
そう言うと「そういうものかな?」と言いながら、高良先輩にSNSでメッセージを送っていた。
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