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第61話
大丈夫です、って返事をすると、直ぐに既読のマークがついて、”電話してもいい?”と聞かれた。
慌ててまだ着ていなかった上の服を着て、ドキドキしながら”はい”と返す。途端電話がかかってきて、恥ずかしい気持ちになりながら電話に出た。
「も、もしもしっ?」
「ふふっ、どうしたの、緊張してるの?」
声が上擦った。高良先輩がくすくす笑うからやっぱり少し恥ずかしい。
「お母さんに話せた?」
「話せました。でも······やっぱり、纏まらなくて。泣いてばかりでだめでした。」
「話せただけ偉いよ。」
高良先輩にそう言われて荒立っていた心が少し落ち着いた。もし会長だったら何て言っていただろう。腰抜けだとか、弱虫だとか、そんなこと言われていたような気もする。
「千紘ちゃん」
「はい」
「······番、俺を選んでよ。」
「······わからないです。」
今は本当は高良先輩に縋り付きたい。でも変な期待をさせるのはダメだ。
「高良先輩、あの······。」
「悠介だよ。そう呼んで。」
「······ゆ、悠介、さん。」
「うん、何?」
何って聞いてくる声が優しい。胸がキュッと苦しくなって小さく息を吐いた。
「悠介さんのこと、好きだけど······今すぐには決められないんです。」
「······わかってる。ごめんね、意地悪した。」
「番になったその先のことを考えると、すぐに契約はできない。悠介さんはそんなことしないと思うけど、契約を解消するアルファだっている。そうなったらもう······俺は生きれないから。」
正直に伝えると悠介さんは「そう、だよね。」と悲しげに言葉を落とす。
「千紘ちゃんが幸せになる道が見つけられたらいいね。」
「······はい」
顔は見えないはずなのに、悠介さんがどんな表情をしているのかがわかる。
辛い思いをしてるのは俺だけじゃない。
オメガから許可を貰えないアルファだって、辛いはずだ。
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