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第63話

明日は今部屋に置いてある食器を撤去して、新しい物を2つずつ買いに行こう。 「ここの鍵も渡さないとな。」 ソファーから立ち上がり、紅茶を入れてテーブルの席に着く。 いい香りのするそれを飲もうとすると、部屋のドアが強くノックされる。優雅な時間に邪魔が入り苛立ちながらドアを開けると、怒った表情の高良がいた。 「何か用か?」 「何か用か?じゃねえんだよ!何勝手なことしてんの!」 「勝手なこと?何のことだ。」 「千紘ちゃんの事だよ!副会長から聞いた。千紘ちゃんとここに住むだって?」 どうやら本気で怒っている様だ。 でも俺にはその意味がわからない。むしろ怒りたいのはこちらで、高良をジッと睨みつける。 「俺と松舞は運命の番なんだ。お前もそれはいい加減に理解してるだろう。仲が微妙だからこうして縮めていこうという俺の考えだ。それを邪魔する権利はお前にはないぞ。」 「あるね!俺だって千紘ちゃんが好きなんだ!」 「なら何故無理矢理にでも番にならなかった?お前も松舞もわけがわからない。俺が松舞に会うより先に番になっていれば良かっただろう。」 ぐっと唇を噛んだ高良は言い返せないようだ。 「······そんな簡単に出来るわけないだろ。」 「何?」 「運命でも何でもないアルファとオメガが、そんなに簡単に番になれるわけが無いだろ!?オメガは自分の命に関わる事なんだ!」 「だから、何だ。命に関わる事って、番関係の解消のことを言ってるのか?お前はそんなことをするつもりなのか?」 番関係は解消できる。 だがそれと同時にオメガには多大なる負担がかかり、死んでしまう。アルファはその後も番を作ることは出来るけれど、一生その重荷を背負わなければならない。 「そんなことを考えるくらいなら、お前は一生番なんて持たない方がいい。俺は解消する事はありえない事だと思っている。あれはただの殺人だ。」 「わかってるけどっ!」 「わかってない。わかっていたなら躊躇しないはずだ。」 その覚悟もないのなら松舞を自分のものにするなんて考えない方がいい。 いや、番を作ること自体、やめるほうがいい。 「愛情は後からでもついてくる。俺が証明してやろう。」 俺にはそれだけの自信がある。

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