72 / 876

第72話 偉成side

運命の番だからと仕方ない気持ちも多少混じりながら接していたのに、今朝は千紘が可愛いと思ってしまっていた。 キスをすると気持ちよくて離れたくなくなったり、嬉しい時や楽しい時、悲しい時の匂いがわかって愛おしさが倍増する。 「千紘ちゃんとの同棲1日目はどうだったの。」 「そんな怖い顔で聞かれてもな。」 生徒会室で高良に詰め寄られる。 匂いはわからないけれど、顔を見ればわかる。これは本気で怒っている顔だ。 「首輪をあげたんだ。ちゃんと自分で着けてくれた。それに料理を美味いと褒めてくれたし、今日は弁当まで持っていったぞ。可愛らしいものだな、運命の番というのは。」 「······首輪をあげた?」 「ああ。」 料理のことを聞いて欲しかったのに、高良が気になったのは首輪のことらしい。 「意味をわかっていてあげたの?」 「ん?何のことだ。」 「アルファがオメガに首輪をあげる意味だよ!!わかってて渡したの!?」 「······ああ、俺はあれが所有印というつもりで渡した。」 そう言った途端高良は顔を赤くして俺の胸倉を掴んできた。 「何であんたは先々そうやって······っ!」 「この前言ったことをもう忘れたのか?」 「······っ」 「お前には覚悟がないんだ。俺には覚悟も自信もある。千紘を離すつもりはないし、誰かに渡してやるつもりもない。」 掴まれていた胸倉。その手を離させる。 「怒るなら、無力な自分に怒れ。」 「俺はあんたほど優秀なアルファじゃないんだよ。」 「そうなろうとしてないだけだ。」 「······会長はなろうとしてなったんじゃない。だから弟君に嫌われてるんでしょ?」 昔匡に言われた言葉を思い出す。 言いなりになりやがって、だとか散々言葉を投げられた。 「そうだな。俺は俺がこうなりたかったわけじゃない。親の言う通りに生きてきた。でもそのおかげで運命の番と契約を交わせるなら、ここまでの過程なんてどうでもいい。」 子供の頃は反発しようとした。 でも俺にはそれをする勇気がなかった。だから、親の言うことを聞かず自分の好きに生きていた匡が羨ましくあるし、憧れてもいる。 「俺は今幸せだからな。」 だからこの幸せを奪われたくなくて意地になっているんだ。

書籍の購入

ともだちにシェアしよう!