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第74話

「恥ずかしくないよ。それは偉成が今まで生きてきた証なんだから。」 「············」 「匡はそういう偉成を知らないんだよ。それを知ったら、きっと変わる。」 そっと頬を撫でられる。 じんわりと広がる熱に縋りたくなった。 「千紘」 「はい」 「······キス、してくれないか。」 「············」 千紘はまだ受け入れていないだろう。 俺と運命の番だということに、嫌気をさしているかもしれない。それでも俺は、千紘が欲しい。 「目、閉じてくれないと嫌です。」 「············」 そう言われ、そっと目を閉じると唇に感じた柔らかい感触。そして脳が蕩けるみたいな甘い快感。 「はっ······」 「千紘······抱きたい。」 「っ!それはダメ!」 ばっと俺から離れた千紘。さすがに調子に乗ったなと「悪かった」と素直に謝る。 「千紘、もう言わないから、ここに来い。」 「本当······?変に触ったりしない?」 「ああ、しない。約束する。」 まだ触られるのは嫌らしい。 それでも大人しく俺の膝の上に戻ってきた千紘が愛しくて、抱きしめてキスをした。 「偉成、お腹空きました。」 「そうだな。何が食べたい?」 「うーん······うどんでいいです。」 「栄養がないじゃないか。」 いつの間にか千紘の手が俺の背中に回っている。そういう所が可愛くて、愛しい。 「鍋焼きうどん」 「······野菜はたっぷりいれるぞ」 「うん。野菜食べれるよ」 「ならそうしよう。」 少し惜しいけれど、千紘を膝から下ろしてキッチンに立つ。 あとは洗濯物を取り込んで、風呂を洗って······。 「偉成!お風呂洗ってきます!」 「あ、ああ、ありがとう。」 自分でやることが1つ消えて、気持ちが楽になった。

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