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第75話 千紘side
***
会長と暮らし始めて何日か経った。
その間に少しの変化が起きた。
俺の私物がどこかへ消えたり、知らない人からヒソヒソと悪口を言われることが増えた。
「······誰あの人達。人の悪口しか言えないなんて可哀想な頭。」
「確かにな。にしても本当、最近始まったよな。お前何かしたのか?」
「してないよ!」
優生君とは相変わらず仲直りはできていないし、周りから与えられるストレスでイライラして、寮に戻り会長の顔を見ると泣きそうになることもある。
「もしかして優生のせいとかじゃねえよな?」
「そんなわけないじゃん。優生君はそんな事しないよ。······でも、いい加減仲直りしたい。」
もうすぐ5月になる。
最近は5月の終わり頃にある体育祭に向けて、体育の授業ではその練習をすることが多い。
チームワークが大切な競技だってあるし、俺はクラスの皆と仲良くなりたいのに、こんな状況じゃ無理な話だ。
「大丈夫。何かあればお前の事は俺が守ってやるよ。あ、俺が無理な時は高良先輩がな。」
「······高良先輩とも最近会えてない。」
「連絡は?」
「たまにメッセージを送ったりしてるけど、高良先輩は忙しいから、返事はなかなか来ないかな。」
俺と会長が一緒に暮らしていることをきっと、高良先輩は知っている。
裏切られたとでも思っているのかもしれない。そう思われたって仕方の無いことをしているんだろうけど。······俺はアルファには逆らえないから、許して欲しい。
「今日はもう帰るね。」
「ああ。俺も帰る。」
放課後の夕日の差しかかる教室。
時間はもう夜の6時で、それでも空はまだ明るい。
もう少しで夏が来る。
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