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第78話

「できるならお前をもっと理解したいんだ。でも······お前はまだ俺を許してくれていない。」 「あ······」 「オメガが許さない限り、アルファは先には進めない。本当に支配しているのはアルファじゃなくてオメガなんだよ。」 確かに、会長は俺が許さない限り何もしてこない。それは会長の優しさだと思っていたけれど、本能なんだ。 「本当は今すぐにでも千紘に発情期が来て、項に噛み付きたいと思ってる。」 「怖い」 「ああ。だから、千紘がいいって言わない限りはしない。」 「うん、安心した。」 俺の方から会長にキスをして目を細める。 「俺も好きですよ。」 「······それは、体がじゃなくてか?本心か?」 そう聞かれると戸惑ってしまう。 だってどっちかが分からない。 「わかりません。でも多分······本心は嫌じゃないって思ってる。」 「そうか」 「······怒りました?」 「怒らない。嫌じゃなかっただけ嬉しい。」 会長は優しいから、そう言って微笑むだけ。俺ならショックだと思う。好きな相手に嫌じゃないって言われたら。それは好きではないのと一緒だ。 「俺はまだ終わりそうにないから、先に寝ておけ。学校が嫌なら、明日は休めばいい。」 「······うん」 「無理して頑張る必要は無いから。······おやすみ。」 離れたくはなかったから、ソファーに寝転ぶ。上から掛け布団をかけてくれた会長と最後にキスをして目を閉じた。

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