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第80話
***
結局眠れなかった。
ぼーっとする頭で、一応のため千紘と自分の分の弁当を作り、朝食の準備を済ませて、未だ寝室でぐっすりと眠る千紘を起こしに行く。
「千紘、起きろ。」
一緒に過ごすようになってしばらく経ってわかったが、千紘は寝起きが悪い。
肩を揺らし、顔を覗き込む。目は開いてないけれど心の底から嫌そうな表情をしているし、匂いからも伝わってくる。まだ起きたくないって声が聞こえてきそうだ。
「今日は休むか?それならまだ眠っていてもいいぞ」
「······偉成は······?」
「千紘が休むなら俺も休む。俺も少し体が疲れているみたいだから。」
「······じゃあ、休む······。」
少し開いていた目を閉じて、また眠りについた千紘。
俺は誉に今日は休むという事を伝え、千紘はまだ寝るらしいから1人で朝食を食べてソファーに寝転んだ。
「······さすがに眠たいな。」
1日徹夜しただけではどうにもならないけれど、いつも通り動くのは少し難しそうだ。目を閉じて千紘が起きるまで寝ることにした。
────それなのに。
ドンッと、突然寝室から聞こえてきた大きな音。慌てて起き上がり寝室に行くと、千紘が床で蹲っていた。
「千紘!?」
「······痛い」
涙目になって見上げてくる。
どうやらベッドから落ちたようだ。
「どんな寝相をしてるんだ」
「違う······寝返り打ったら、その先に何も無かったの。」
「そうか。柵でもつけようか?」
「······要らない」
のそっと起き上がり、俺の手を掴んで軽く引っ張ると簡単に立ち上がった。
「お腹空いた」
「ああ、用意してあるよ。おいで」
部屋を移動して、テーブルの上に並べてある朝食を見て千紘が目を輝かせる。
「今日はサンドイッチだ!」
「ああ。」
「サンドイッチ大好きなんです!特にこれ!レタスとハムとツナマヨの!」
「そうか。また作ろう」
いただきます、と手を合わせ勢いよく食べる千紘が可愛らしい。
「あっ!偉成!そういえば忘れてた!」
「何だ?」
「おはようございます!」
満面の笑みで言われると、俺も釣られて笑顔になる。
「おはよう」
こういうのが、俺の求めていた幸せな朝だ。
このまま、千紘と一緒に毎日を過ごしたい。
そのためには早く、千紘の周りで起きている問題を片付けて、契約を交わさないと。
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