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第81話 誉side

*** 5月は体育祭がある。 そのせいで生徒会は忙しいって言うのに、会長の偉成が今日は休んでいる。 「何で会長が休んで俺らが働いてるんだよ!」 「高良うるさいぞ。高梨だってそう思ってるんだよ。」 「東條は思わないの!?会長は千紘ちゃんと一緒に休んでるんだよ!?俺だって休みたい!」 生徒会室は珍しくうるさい。 今日は偉成に頼まれた事を調べないといけないし、やる事が多くて滅入る。 「東條、高良聞いてくれ。」 「何?」 改めて俺がそう言ったから、高良は訝しげな顔で俺を見る。 「松舞千紘が嫌がらせを受けている。それについて会長から調査をするようにと頼まれた。」 「はっ?嫌がらせ?」 高良も東條も初めて知った事実に目を見開く。 物が無くなること、下品な言葉を掛けられることを伝えると、表情を厳しくさせる。 「主犯はきっと会長か高良······2人を狙ってるオメガだろう。松舞は2人の傍にいたから、気に食わないオメガ達に標的にされたんだと思う。」 「何それ······。え、でもオメガは学内でも少ないよ?その中の数人ってこと?」 「きっとベータも混ざってるだろうな。」 全てのオメガが自分の貞操を守ろうと必死になっているわけじゃない。 時には体で金を稼いだりもする者もいるらしい。もしそういう者がいたとしたなら、相手にしてやる代わりにベータの意見を買う事なんて容易いだろう。 「じゃあ抱かせてやる代わりに千紘ちゃんをいじめろって事?汚いやり方だね。」 「その主犯を俺達で見つける。周りにはバレないようにしろ。」 「見つけたらどうすればいい?ここに連れてくるのか?」 「それは会長が決める。まずは会長の指示を仰げ」 高良は思い当たる人物がいるのか、さっきから頭を悩ませているようで難しい表情をしている。 「ちょっと俺、1年の教室に行ってくるね。」 「ああ。」 そしてその表情のまま立ち上がり、生徒会室を出ていった。

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