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第82話 優生side
どうしよう。どうすればいいんだろう。
あの日、安達先輩と話した日から、日常が崩れていった。
千紘君は悪くないって言うのはもうとっくに分かっていたのに、安達先輩が怖くて刃向かえない。
初めはなんともなかった。
俺もまだ千紘君に少し腹を立てていたくらいで、何かをしようだなんて思ってなかったんだ。
それが、少し時間が経つとクラスメイトのベータ達や、他の学年の人達が千紘君の悪口を言うようになった。
高良先輩を誘惑しただとか、もっと汚い言葉を千紘君に投げつける。
千紘君は匡君と一緒にいて、その間は気丈に振舞っていたけど、1人になると表情を固くさせていた。
それも全部全部知ってる。
だから、こんなことをするのは間違ってる。
千紘君の下駄箱。そこの前に立ったまま動けない。
安達先輩の指示は、千紘君の上履きを隠すことだった。
今日千紘君は学校に来ていない。もしかしたら嫌がらせを受けたショックで休んだのかもしれない。
早くしないと安達先輩に怒られる。
そう思って下駄箱に震える手を伸ばした時だった。
「──何してるの?」
聞きなれた声が聞こえて、手を引っ込めた。
見られてしまったってことより、助かったって安心の方が大きくて震える息を吐く。
「チビちゃん、俺とお話しようか。」
でも、そこに居たのは満面の笑みを貼り付けた高良先輩で、怒っているというのは直ぐにわかった。
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