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第84話 悠介side

1年の千紘ちゃんの教室に行くと知り合いは赤目君しかいなかった。 チビちゃんは?と教室中を何度か見渡してもその姿はなくて、校内をプラプラ歩いていると、学校の玄関口で震えながら何かを決心したかのように、誰かの下駄箱に手を伸ばすチビちゃんがいた。 自分の下駄箱に向かって、あんなに緊張しながら何かをする人なんてそうそういない。何か後ろめたいことをしているんだろう。千紘ちゃんの事と関係ないかもしれないけど確認するか。 ······そう思いながらそっと近づいた。そしてわかったのはその下駄箱は千紘ちゃんのものだと言うこと。 「何してるの?」 だから、一気に熱が上がった。 ああ、この子は千紘ちゃんの件に関わってるんだと、確信した。 なるべく怖がらせないように笑顔で話してみせるけど、オメガのチビちゃんは俺から無意識に出る圧力に怯えているようで、空き教室に移動しても震えたままだった。 そして吐いてくれた主犯の名前。 それは俺によく付きまとっていた安達君で、呆れ返って溜息しか出ない。 名前を教えてくれたことにお礼を言って、会長に連絡をする。これは俺の問題だから、本当は俺だけで済ませたかったけれど、副会長から会長に指示を仰げと言われた手前、勝手に行動はできない。 「もしもし」 「会長?主犯はわかったよ。どうすればいい?」 「そうか。明日生徒会室にでも呼び出すか。」 「······あのさ、俺にいつも付きまとってる子なんだ。だから俺に任せてくれない?」 お願いをすると、しばらく沈黙が続いた。けれど「わかった」と会長が俺に任せてくれたから、さあ、どう動こうかとワクワクする。 最近は千紘ちゃんが幸せになるなら、それでいいと思ってあまり千紘ちゃんに近づくことは無かった。 会長が嫌なら逃げてくるはずだ。正直それを期待していたけど、どうやらその様子はない。 だから、逆に邪魔をして千紘ちゃんの心を揺さぶるのはいけないなと思っていた矢先、こんな事が起きて、正直俺は怒っている。 「千紘ちゃんの事は守ってあげるからね。」 俺の大切で可愛い子。 千紘ちゃんが傷つけられた分を倍にして返してあげよう。

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