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第85話 千紘side
今日は学校を休んだ。
朝眠たかったこともあるけど、最近の嫌がらせに心が疲れてしまった。
「偉成」
「ん?」
ベッドで仰向けに寝転ぶ偉成の上に寝転んで密着し、大好きな匂いを嗅ぐ。それだけで気持ちは落ち着くし安心できる。
「偉成の匂い大好き」
そう言って胸に顔を押し付けると髪を撫でられて、心地良さに目を閉じる。
「今月は体育祭があるな。千紘は何に出場するんだ?」
「絶対にオメガ1人はメンバーに入れないといけないからって、リレーに出ることになりました。」
「ああ、そんな条件が確かにあったな。走るのは得意か?」
「全く。運動音痴だから体育祭は楽しいけど嫌いです。」
顔を上げて、偉成の顔を見る。
「偉成は?何に出るんですか?」
「俺もリレーに出るぞ。」
「本当?走るの得意?」
「得意かはわからないが、好きだな。」
「足速いんだろうなぁ。羨ましい。」
胸に頬をつける。聞こえてくる心臓の音。
「千紘」
「はい」
「······お前と番になりたい。」
「······うん」
「次の発情期は7月だろう。俺はその時お前の項を噛むつもりだ。逃げるなら、それまでに逃げろ。もう、それ以上は追わないから。」
なんだか切ない。
そんなこと言って欲しくなかった。
「運命の番なんでしょ······?なら、諦めないでよ。」
「······俺には時間が無い。長男だから、跡継ぎも必要なんだ。それには早く番を作らないといけない。この世界にオメガは少ない。ここを卒業すればそれ以降は出会えないかもしれない。」
「······そんなの」
「だから、7月まで待つ。」
会長も俺も、自分勝手だ。
「そんな短期間で、会長の事全てを理解できるとは思えない。」
「ああ、そうだろうな。でもきっと運命に選ばれたんだから、俺達は理解し合える。」
「······番になっても、子供が出来ないかもしれないよ。そうしたらどうするの?契約を解消して新しいオメガの項を噛む?」
「そんな事はしない。お前を裏切るようなことは絶対に。」
俺はこの学校にいい就職先を見つけるために来た。
まさかこんなことになるなんて思っていなかったけれど、ここに通ったオメガがアルファの元に嫁ぐのが就職だって言うなら、俺は最良物件を手に入れることになるんだ。
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