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第91話 悠介side
自分の教室に戻る。そこに居るはずの安達君を目的に。
俺の前の席に座っていた安達君は、俺を見ると笑顔になって近づいてきた。
「やっと来た!今日も生徒会忙しかったの?」
「······ねえ、話があるんだ。」
「話?」
何を思ってるのか、笑顔のまま俺の言葉を聞いている。
「千紘ちゃんを虐めるように指示してるね。どうしてかな?」
そう問いかけると、安達君の表情が固まった。まさかバレているとは思わなかったらしい。
「······松舞君は高良君の邪魔をしてばかりだから、教えてあげてたんだよ。それだけ。」
「へえ?それだけで千紘ちゃんの友達に、上履きを隠すように指示したんだ?」
安達君の表情が崩れる。
誤魔化しきれないとわかったのか。
「そうです。俺が松舞君を虐めるように指示しました。小鹿君だけじゃなくて、他のベータにも。」
「そうです、じゃねえんだよ。」
思っていたよりも低い声が出て、体の制御が自分ではできない。
安達君の胸倉を掴み壁に押し付ける。苦しそうに呼吸をする安達君を見ても、怒りしか湧いてこなかった。
「千紘を傷付けるな。俺の大切な子なんだよ。わかるか?」
「······っ」
「お前より上のベータにどうやって指示したんだ。」
「くる、し······っ!」
教室が騒がしくなる。
ベータ達が俺を止めに入って、安達君と引き離した。
「お前らは指示されたのか!」
だからそのベータ達に聞けば、皆首を縦に振る。ああもう最悪だ。俺のクラスの奴ら全員が関わっていたなんて。何で俺はそれに気付かなかったんだろう。
「安達から何を貰った?何を貰って、代わりにテメェの意見をあげたんだ?」
「······っ」
そばにいたクラスメイトに聞くと、ガクガクと震えて床に座り込む。他の生徒は誰1人として俺と目を合わせようとはしない。
「っは、俺がわざわざ抱かれたに決まってるでしょ?」
「······ああ、そうか。」
副会長が予想した事が的中した。
なんてくだらないことの為に自分を差し出したんだろう。
「松舞の存在が邪魔だったんだよ。君は俺を見向きもしない。それどころか新入生に現を抜かしてさあ!」
「俺が安達君を見ないって······?そりゃあそうだ。俺はこんな事する人間を好きになれない。」
「松舞だってするかもよ?例えばほら、今は君より上の生徒会長に必死に媚びてるじゃないか。知ってるよ?松舞君が会長と一緒に暮らしてるってね。」
何も知らない可哀想な人だ。
妬むことでしか行動できないなんて。
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