91 / 876

第91話 悠介side

自分の教室に戻る。そこに居るはずの安達君を目的に。 俺の前の席に座っていた安達君は、俺を見ると笑顔になって近づいてきた。 「やっと来た!今日も生徒会忙しかったの?」 「······ねえ、話があるんだ。」 「話?」 何を思ってるのか、笑顔のまま俺の言葉を聞いている。 「千紘ちゃんを虐めるように指示してるね。どうしてかな?」 そう問いかけると、安達君の表情が固まった。まさかバレているとは思わなかったらしい。 「······松舞君は高良君の邪魔をしてばかりだから、教えてあげてたんだよ。それだけ。」 「へえ?それだけで千紘ちゃんの友達に、上履きを隠すように指示したんだ?」 安達君の表情が崩れる。 誤魔化しきれないとわかったのか。 「そうです。俺が松舞君を虐めるように指示しました。小鹿君だけじゃなくて、他のベータにも。」 「そうです、じゃねえんだよ。」 思っていたよりも低い声が出て、体の制御が自分ではできない。 安達君の胸倉を掴み壁に押し付ける。苦しそうに呼吸をする安達君を見ても、怒りしか湧いてこなかった。 「千紘を傷付けるな。俺の大切な子なんだよ。わかるか?」 「······っ」 「お前より上のベータにどうやって指示したんだ。」 「くる、し······っ!」 教室が騒がしくなる。 ベータ達が俺を止めに入って、安達君と引き離した。 「お前らは指示されたのか!」 だからそのベータ達に聞けば、皆首を縦に振る。ああもう最悪だ。俺のクラスの奴ら全員が関わっていたなんて。何で俺はそれに気付かなかったんだろう。 「安達から何を貰った?何を貰って、代わりにテメェの意見をあげたんだ?」 「······っ」 そばにいたクラスメイトに聞くと、ガクガクと震えて床に座り込む。他の生徒は誰1人として俺と目を合わせようとはしない。 「っは、俺がわざわざ抱かれたに決まってるでしょ?」 「······ああ、そうか。」 副会長が予想した事が的中した。 なんてくだらないことの為に自分を差し出したんだろう。 「松舞の存在が邪魔だったんだよ。君は俺を見向きもしない。それどころか新入生に現を抜かしてさあ!」 「俺が安達君を見ないって······?そりゃあそうだ。俺はこんな事する人間を好きになれない。」 「松舞だってするかもよ?例えばほら、今は君より上の生徒会長に必死に媚びてるじゃないか。知ってるよ?松舞君が会長と一緒に暮らしてるってね。」 何も知らない可哀想な人だ。 妬むことでしか行動できないなんて。

書籍の購入

ともだちにシェアしよう!