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第93話 彰仁side

高良が出ていった後、俺は副会長の高梨と松舞の事を話していた。 「俺は一瞬しか見てない。この前のオメガを集めて話をした時も、会長が連れて行ってしまったからな。」 「松舞は可愛い顔をしてる。チワワみたいだ。」 「チワワ?犬に例えられて嬉しいのか?」 「知らない。今俺が勝手に言ったから。」 きっと今高良が動いて問題を解決してるんだろう。俺達は大人しく此処で待っているのが賢明だ。 「会長が誰かの為に俺に動くように指示したのは初めてだった。運命の番っていうのはそれ程までに力があるんだな。」 「だから逆に言うと怖い。自分自身をコントロールできなくなるんじゃないか?」 「ああ、なるほどな。確かにそうかもしれない。決していいことばかりじゃないだろうな。」 「会長がおかしくなったらあんたが止めろよ。」 そう言うと高梨は眉間に皺を寄せて「何でだよ」と聞いてくる。 「幼馴染だろ。」 「面倒臭い。そもそも、会長は俺には理解できない思考回路をしてる。おかしくなったかどうかは判断できない。」 「······確かにな。」 しばらくそんな話をしていると、高良が戻ってきて「終わった」と一言伝えてきた。 「主犯は俺のクラスの安達君。それに協力したのが沢山いる。安達君とは今話をしてきて、多分もう2度と千紘ちゃんを虐める事はないと思うから、本人に謝らせて終わり。」 「会長には伝えたか?」 「それが······さっきから電話してるんだけど出ないんだよね。」 疲れたのか隣に座った高良はそのまま寝転んで俺の膝に頭を乗せてくる。 「やめろ、気色の悪い。」 「頑張った俺に対して気色の悪い?鬼かよ」 反対側にあるソファーに寝転び、肘掛けを枕に眠り出した高良。今回は高梨も休むことを許してやるそうだ。 「あーぁ、千紘ちゃんに会いたいなぁ。」 「そう言えば、松舞はチワワに似てるのか?」 「え?誰が言ったの?」 「東條」 高良が俺を見て、それから考えるように眉を寄せた。 「確かにそうかも。チワワに似てるね。あれ?見た事ないの?」 「ああ、あまりな。」 「今度話してみなよ。可愛いから。······あ、好きになっちゃダメだよ。」 「ならない」 松舞の事については意外とあっさり解決出来た。 さあ、体育祭の事について考えないと。

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