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第101話
「戻ろうか。」
「え······?戻りませんけど。」
「ん?聞き間違いか?もう1回言ってくれ。」
「戻りません。今日は嫌です。」
クルンと回れ右をして足を進める。でも「待て待て」と肩を掴まれて足が止まった。
「部屋に戻ってきてくれ。ちゃんと話がしたい。」
「······今日は別のベッドで寝ます。それでもいいですか。」
そう言って会長を見ると、渋々と言うように頷いた。
······それなら戻ってあげよう。俺も小さく頷く。途端笑顔になった会長に、不覚にもキュンとしてしまった。
会長に手を掴まれ、来た道を帰る。その間何の会話もなかったけど、嫌な感じはしなかった。
部屋に戻ってきて、冷めてしまったご飯を温め直してくれている会長の後ろ姿を見ながら、今更俺が高良先輩を沢山傷つけたことに対して罪悪感に苛まれていた。
高良先輩が泣いていた。
いつも優しくて笑顔でいた先輩を、俺が泣かせてしまったんだ。
「······何で俺はこんなにダメなんだろう。」
小さく呟くと、だんだんと悲しくなってきて、心がグラグラと揺れる。
「千紘······?泣いてるのか?」
俺が悲しんでるってこと、匂いでわかったのかな。火を止めてそばに来てくれた会長は俺の顔を覗き込んで眉を寄せる。
「何がそんなに悲しいんだ。教えてくれないか······?」
「······高良先輩を傷付けました。沢山お世話になったのに、裏切った。」
会長を選ぶって事は、高良先輩を裏切ったのと同じだ。
俺のことを好きって言ってくれたのに。番になろうって。守るからって。
「············」
「わかってたけど、止められなかった。だって······運命の番なんだもん。偉成のそばにいたら、それだけで安心できるの······。体と心が欲しがるんだもん······っ!」
頭ではわかっていても止められない。
運命の番に憧れていた。でも実際出会ってしまえば、その時の状況なんて関係なく相手を欲してしまう。
「······運命の番なんて、そんなの存在しなかったらよかったのに。」
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