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第106話
***
結局、千紘の意識が無くなるまで抱いていた。
千紘の隣に寝転んで、そっと抱きしめる。
「······体拭いてやらないと」
色んな液体でシーツもぐちゃぐちゃだ。
とりあえず、千紘の体を拭いてソファーに1度寝かせよう。それからシーツを替えて、またここに運んでくるか。
「······いや、起こそう。」
寝てるのに申し訳ないけど、きっとすごい手間と時間がかかる。
「千紘」
肩をトントンと軽く叩く。
ダルそうにゆっくりと薄く目を開けた千紘と目が合って、「風呂に入ろう」と言うと手を伸ばし首に腕を回される。
「抱っこ」
「そのままちゃんと腕を回してろ。」
「ん」
千紘をそっと抱き上げて風呂場に運ぶ。
俺の腕の中で微睡んでいるのが愛らしい。風呂場について椅子に座り、温かいお湯をかけてやる。目を開けた千紘は「気持ちいい······」と言って目を細めた。
「お腹の中、なんか凄い違和感ある······。」
「無理させて悪かった。」
千紘を椅子に座らせ、髪を洗って、ボディーソープを泡立てる。
泡で千紘を包み、お湯で流した。
湯船に千紘を浸からせて、急いで自分の髪と体を洗い、一緒に湯船に浸かった。
「眠い······」
「シーツ替えるから、風呂からあがったらソファーで待っててくれ。」
「うん。······あの、ごめんね。俺が······その······」
潮の事を言ってるのだろうか。それなら気にしなくていい。寧ろあんな千紘の姿を見れた事が嬉しかったのに。
「可愛かったよ」
「······恥ずかしいから、あれはもうやだ。」
「そうか。わかった。」
まあ、俺がどうこうできるものではないんだけれど。
こういう千紘の何も知らない純粋なところが俺は好きだけれど、高良もそうなのだろうか。
明日は高良と話をしなければならないと思う。いい加減、千紘は諦めろと伝えないと。
「偉成、もう暑い······。」
「ああ、そろそろ出ようか。」
まだ腰の立たない千紘を抱き上げ、一緒に風呂を出た。
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