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第108話
ぐちぐちと溢れて止まらない言葉を吐き続ける。
嫌な顔1つしないでただ話を聞いてくれる赤目君。だんだんと視界が滲んで、悲しさと寂しさに耐えきれずに情けなくも泣き喚いた。
「俺が、会長より先だったのに!!」
「······鼻水拭けよ。」
「そう思わない!?赤目君だって千紘ちゃん取られて寂しいでしょ!?」
「俺は友達だから、取られるって感覚はねえけど、兄貴が千紘の番になる事に対しては反対だ。あいつはいつも親の言いなりだったから、兄貴の元に嫁いで千紘が苦労しないわけがない。」
誰よりも会長とその両親を知る赤目君がそう言うんだ。きっとそれは本当なんだろう。
渡されたティッシュで鼻水を拭く。クッションを抱えて、ジロっと赤目君を見た。
「君はご両親と仲が悪いの?」
「ああ。あいつらは兄貴さえいれば問題ないと思ってる。」
溜息を吐いた赤目君は、「もう帰っていいか?」と聞いてきた。それを首を左右に振って拒否する。
「俺はまだ話し足りないの!」
「風呂に入って寝たい」
「付き合ってよ!」
「嫌だ。あんたも早めに寝ろ。余計なことまで考えるから辛くなるんだ。」
年下にそんな風に言われると腹がたつ。でも今日はそこまでの元気がないから見逃してあげよう。
「あ、先輩。」
「何さ」
「多分あんたは千紘にも怒ってるんだろうけど、あいつが泣いてたらきっとまた助けようとするんだろ?」
否定できなくて、ただじっと赤目君を見ていた。
「それが悪い事とは言わない。でも千紘から離れるつもりなら、もうやめたほうがいい。あいつもあんたに甘え過ぎていたって気付くから。」
「でも······」
「優しすぎるのも、ダメだと思う。······じゃ、シャンプー借りてくんで。また後で返しにくる。」
「はいはい」
手を振って、赤目君が部屋を出て行ったのを見送った。
言いたい事を言いただけ吐き出したら少しスッキリした。
「今頃仲直りのエッチしてたりして······。」
ああ、嘘。
やっぱりイライラしてきた。
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