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第112話

授業が終わり匡の所に行く。 「匡?」 「······これありがとう」 「うん。それより大丈夫?顔赤いよ」 「んー······ちょっと無理。保健室行ってくる。」 「送るよ。」 優生君と一緒にフラつきながら歩く匡を保健室に連れていく。保健の先生がいたから、匡を預けて俺達は急いで服を着替え、次の授業の準備をした。 「匡の体熱かったね。」 「熱があるかもしれないね。」 「早退するってなったら、寮まで1人で帰るのかな······。1人じゃ危ない気がする。ほら、ちょっとふらついてたし。」 「そうだね。でも、僕達は授業があるし······。」 学校が終わるまで保健室で休んでいてくれたらいいんだけど、逆にゆっくり休めやしない気もする。 「······あ、会長に頼んでみようかな。」 「え······?」 「会長と匡は兄弟なんだよ。仲は······そんなに良くないみたいだけど、家族だし······。」 「そうなの!?」 まあ、もし帰るってことになったら連絡をすればいいか。会長は匡の事を気にしていたようだし、無理矢理にでも話す機会があったっていいと思う。 「でも、匡に怒られたらどうしよう。」 「そしたら僕も一緒に謝るよ」 そんな話をしていると、フラフラな匡がやって来て「帰る」といい、服を着替えだした。 「優生君、1人で帰ろうとするの、止めててね。電話するから!」 「う、うん!······僕にできるかなぁ。」 不安げな声が聞こえてきたけど、それよりも会長に電話をするのが先だ。 電話をかけるとすぐに「もしもし」と出てくれた会長。 「偉成······?あのね、匡が体調悪くて早退するんだけど、1人じゃフラフラで危なくて······。」 「俺が匡を寮まで送ればいいのか?」 「できたら、そうしてほしいな。」 そうお願いすると「わかった」と言われ、電話が切れた。 「千紘、優生をどうにかしてくれ。」 そう声が聞こえ、匡の方を見ると優生君が匡に抱きついている。 ······引き止め方が予想と違う。言葉で止めてくれると思ってたのに、そんなに体を張ってくれるなんて。 「熱があったの?」 「ああ。なんか38度5分とか出てた。最近の疲れが寝不足のせいで一気に来たのかも。」 「そう······。」 チャイムが鳴る。 次の授業は何だったか。 「──千紘」 「あっ!」 会長の声が聞こえて廊下に出る。笑顔で俺を抱きしめてきた会長に、俺も自然と笑顔になった。

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