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第121話
トントンと肩を叩かれる。
目を覚ますと千紘がいて、「体調どう······?」と聞いてきた。
「もう大丈夫」
「そう?熱計って」
体温計を渡されて、脇に挟む。
「朝御飯は食べれそう?偉成が作ってくれてるけど······。無理はしなくてもいいよ。それにしんどいなら今日も休んでいいし。」
「いや、中間前に休みたくない。······ほら、熱も下がったっぽい。」
体温計を見ると温度は36度5分。
体がだるいけれど昨日よりはずっとましだ。
「よかった!そろそろ起きる?お風呂にも入りたいよね?」
「ああ、そうだな。······色々世話かけて悪い。」
「気にしないでよ!いつもお世話になってるのは俺の方だし!」
明るく笑って、俺に手を貸してくれてゆっくり起き上がった。
リビングの方に移動して朝御飯の準備をしていた兄貴に声をかける。
「ああ、おはよう。熱はどうだ。」
「もう下がった。」
「良かった。一緒に朝御飯を食べよう。こっちに座れ。」
言われた場所に座り、差し出されたご飯を食べた。
そして兄貴から俺と千紘に四角い箱が渡される。
「弁当だ。無理に食べなくていいから。特に匡。」
「ああ、サンキュ。」
「偉成、ありがとう!」
有難く弁当を受け取って、風呂に入るために1度部屋に帰ることにした。
まだ朝は早い。これから朝御飯を食べようと食堂に行く生徒が多い。
「赤目君おはよう。」
「あ、高良先輩。」
「何持ってるの?」
「弁当です。」
「へえ?オメガの子からもらったの?」
兄貴に関わることを今このタイミングでこの人に言ってもいいのか分からなかったけど、事実だからいいかと本当のことを口にする。
「兄貴のです。昨日熱出て兄貴が看病してくれて。」
「熱出たの!?大丈夫?」
「もう下がったんで。」
早く風呂に入りたいと先輩からジリジリと離れて行く。
この先輩は話が長いんだ。この前もそれで眠るのが遅くなったんだ。
「じゃあ、失礼します。俺風呂に入りたいんで。」
「うん。じゃあね!」
よし、逃げれた。
早く準備を済ませて学校に向かわないと。
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