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第131話

「あぅっ、ぁ、噛まないで······っ!いた、ぁっ!」 「はぁ、千紘······。」 止められない。アルファの本能のせいだろうか。もう、このまま千紘を食べてしまいたい。 「っ、やだぁっ!もうやだ、痛い······っ!怖い、もう、やめて······っ!」 「怖い?何がだ。」 「あっ、あ!嫌っ、お願い······っ!も、もう、許してぇっ!」 千紘が泣き叫ぶ。その言葉でハッとした。 俺は何をしているんだ。 アルファの本能だからといって、制御するべきだった。 「うぅっ、嫌い······っ、こんなの、嫌っ!」 「悪い、千紘······。」 ゆっくりペニスを抜いて、千紘を膝から下ろした。これ以上触れているとまた間違いを犯しそうだったから。 「千紘······」 「やだっ!触らないで!」 「······っ」 酷いことをした。 とにかく千紘の体を綺麗にしてあげないといけない。温かいお湯とタオルを取りに行って、戻ってきても千紘は泣いていた。 「······拭くぞ」 「っ、嫌っ!」 「っ!」 手を払われてタオルが床に落ちる。 こんなに拒否をされたのは初めてで、どうしていいのか分からない。 「痛いって言ったのに······っ!偉成の馬鹿!」 最悪だ。 本能に抗えずに、こうして千紘を傷つけるなんて。 「悪い······」 「もういい······っ!勝手に1人で寝て!」 「千紘、悪かった。」 「知らない!」 自分が悪いのはわかっている。だから千紘の言う通りにするべきだ。 千紘から離れて先に風呂に入り、とりあえず1人でそっとしてあげた方がいいと思って、部屋から出た。

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