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第133話 千紘side
ジクジクと体が熱くて痛い。
「痛い······」
偉成が用意してくれたタオルで体を軽く拭く。ピリピリと沁みて涙が滲んだ。
頰を伝って涙が溢れていく。それを手の甲で拭って、お風呂に入る。
「何で噛むんだろ······。番になるときに頸を噛むだけじゃダメなの······?」
お風呂で体と髪を洗いタオルを体に巻いて部屋に出た。
「······あ」
「······風呂、入っていたんだな。」
今は偉成と話したくない。フンと顔を背けて着替えに寝室に行く。
「千紘、聞いてくれないか。」
「嫌」
拒否をすると偉成が悲しそうな顔になった。でも悪いのは偉成だもん。もっと反省しろと思う。
服を着て、ベッドに横になる。明日みんなに偉成の愚痴を言ってやるんだ。匡も優生君もきっと聞いてくれるはずだ。
***
その日、偉成は俺と同じベッドでは眠らなかった。
朝起きるとご飯だけが用意されてあって、偉成はもういない。こんなんじゃ偉成が悪いのに、俺が意地悪をしているみたいじゃないか。
「え、これって俺が悪かったっけ······?」
いや、絶対にそんなことはない。
もやもやした気持ちを抱えたまま学校に登校し、席に着く。
「おはよう、千紘君。」
「おはよう」
「何でそんな暗い顔をしてるんだ?」
「匡······。偉成に沢山噛まれて痛くて、嫌だって言ってもやめてくれなくて······」
噛まれたあとを見せると優生君は苦笑を零す。
「それだけ千紘君が欲しいんだよ。欲しくてたまらなくて、本能が千紘君を得ようとしてるんだよ。」
「······でも、だからって噛まれたくない。」
「俺はまだアルファの本能を感じたことはねえけど、抗うことは難しいらしいぞ。」
「············。」
そんなこと言われたって、しらないもん。
ムッとしてると「まあ、痛かったんだもんね。」と優生君に肩を撫でられる。
「番になるまで大変かもね。千紘君も会長も。」
「······うん。」
許してあげないといけないのだろうか。
難しくてよくわからないや。
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