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第137話
「やだなぁ。リレーしたくない」
「今更何言ってんだ」
「そうだよ。折角なんだから楽しもうよ!」
全員での体操も終わり、競技が始まっていく。だんだんと自分の出番が近づいていく度に緊張して憂鬱になった。
「匡君も走るんだし!」
「仕方なくだけどな。」
「俺も仕方なくだよ!」
ついにその時がやってきて、匡と一緒に移動する。
「赤目君、松舞君!」
「あ······井上君。」
俺のクラスのもう1人のアルファの井上君。協調性もあるし、明るい性格だから、クラスでは人気者。
「ああそうか、お前もリレー出るのか。」
「仕方なくねえ。」
「あはは、俺達全員仕方なくなんだね。」
アルファは運動神経も抜群だから、駆り出されてしまったのかも。そういえば出場競技を決める時はベータの人達が中心になって決めていたから、拒否権なんて殆ど無かったんだろうな。
「松舞君は走るの得意なの?」
「······そう見える?」
「んー······可愛く走りそうだね。」
今絶対馬鹿にした。そう思って睨みつけると、井上君は笑って俺の睨みを躱す。
「これ全学年でやるから大変だよね。」
「そうだな」
「2、3年のアルファと走ることになったら面倒だよ。プライド高いから俺達が勝ったらグチグチ言われるかも。」
「えー!わざと負けるのは嫌だよ!匡も井上君も本気で走って!」
勝負なんだから本気を出さないと。俺は走るのは苦手だけど負けたくはないから、本気を出すつもりなのに。
「わざと負けるなんてしないけどさ、後が面倒だねって話。」
「······何が?」
「アルファだからね、皆家は会社をやってたりするんだよ。まあ、赤目君は問題ないとして、俺はそこまで大きな会社じゃないからなぁ。ここでもし勝ったら、俺より大きな家の人に意地悪されるかも。」
たかが体育祭が、そんな所にまで繋がるなんて。
これはこれ、それはそれって割り切れないのは格好悪い。
「あ、入場だよ。」
話をしていると入場の合図が鳴って、グラウンド内に足を踏み入れた。
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