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第138話
リレーは5人1チーム。
俺は第3走者で、井上君が第1、匡は第5走者だ。
2.4走者は同じクラスの田中君と橋本君。リレーに参加することになって初めて話をしたけど、2人とも優しい人だった。
「あっえっと、どっちの手でバトン受け取るんだっけ!?」
「右手だよ。渡す時は左手。」
「そっか!じゃあ田中君から右手で受け取って、橋本君には左手で渡したらいいんだね!」
「そうだよ。ていうか緊張しすぎじゃない?大丈夫?」
田中君が俺の肩を撫でて「落ち着いて」と深呼吸をするように促してきた。
「ありがとう。リレーとか小学生の頃以来だから······。」
「わかるー!あとは殆どアルファ様と出来るベータが走ってたよな。」
橋本君がそう言って俺の背中を叩く。それが地味に痛い。
「橋本君は走るの得意?」
「得意じゃないけど、苦手でもないな。ただ好きなだけ。」
「田中も好きだって。なあ、そうだよな?」
「そんな話をした覚えないけど。」
走者順に並んで、スタートの合図を待つ。井上君と一緒に走る人達は皆ベータだったようで、「余裕だねぇ」と言って準備をする。
後ろを振り返れば、匡がいて、その隣に偉成がいた。目が合って手を振ると、偉成も手を振り返してくれる。どうやら偉成は匡と同じアンカーらしい。
そんなことをしている間に、先生がスタート付近にたち、ピストルを掲げていた。
3.2.1.で大きな音が鳴り、乾いた大きな音が鳴る。
「井上君、頑張れー!!」
颯爽と走る姿が格好いい。余裕で1番になってバトンが回ってきて、田中君に渡った。
走るのが好きだって橋本君が言っていたけど、そうなだけあって田中君も足が早い。
「千紘!早くスタートライン行け!」
「あっ······!」
匡に言われて慌ててスタートラインに立って、右手を後ろに差し出す。
受け取ったら走る······受け取ったら走るんだ······!そう思いながら、田中君からバトンを渡されるのを待つ。
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