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第141話 偉成side
千紘を送ってから生徒会の仕事があるから、その場所に戻る。
「まるで王子様だったね。見せびらかされて気分最悪。」
「······嫉妬か。ならお前が早く千紘に駆け寄ればよかった話だろ。」
高良が険しい表情で椅子に座っている。
「千紘ちゃんは大丈夫だったの?」
「ああ。今日は風呂に浸かりたくないってごねていた。」
「あはは、可愛いなぁ。早く許してもらいたいけど、何か······またハメ外しそうで怖いな。」
「そうなったら今度こそ俺は許さないけどな。」
俺も椅子に座り、この後の進行を確認する。昼休憩があって、午後からは応援合戦からまた競技が始まって······。
「会長、走ったんだから水分取れよ。後からしんどくなるぞ」
「ああ、ありがとう。」
東條がわざわざ水を持ってきてくれて、それをごくごく喉を鳴らして飲んだ。
走ったあとの水は美味い。
「偉成っ!」
「おお、何だ。」
進行を確認しながら、体を休めていると誉が慌てて走ってきた。只事ではなさそうな雰囲気に、生徒会全員に緊張が走る。
「オメガが1人発情した。たまたまトイレで倒れそうになっているのを見かけてな。」
「全員グラウンドに集まるようにアナウンスを流せ。オメガには緊急抑制剤を打ったあと移動させる。アルファだけでは対処しきれないから、他のオメガにも手伝ってもらおう。」
そう指示を出すとそれぞれがすぐに動き出して、俺は手伝ってくれるオメガを探す。
体育祭の間でも、オメガ達は首輪をしている。それを目印に近くにいたオメガに声をかけて事情を話せば、直ぐに理解をして協力してくれた。
「偉成!こっちだ!」
抑制剤はもう射ったようだった。
虚ろな目になりながら荒く呼吸をするオメガに俺も誉もぐっと唇を噛む。
「すまない。寮に連れて行こうと思う。手伝ってくれ。」
いくら運命の相手や想い人がいても、オメガのフェロモンはキツい。俺もこういう学校行事の時は事前に抑制剤を飲んでおくべきだったな。そうすれば少しも充てられずに済むはずだ。
「······フェロモンの匂いが着いたな。」
「まあ、仕方ない。大事にならなくてよかった。」
オメガの寮に向かう最中で、溜息を吐いた。
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