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第143話

午後からも走り回り、やっと体育祭が終盤に差し掛かった。 疲れきって動きたくない。それでも閉会式は挨拶があるし、正直後は全部誉に投げつけたいところだ。 「ほら、あと少しだ。」 「代わりにしてくれてもいいぞ。」 「無理だな。」 ベンチから立ち上がり、朝礼台のそばまで寄る。名前を呼ばれて台に上がり簡単な挨拶をした。 ここからは千紘がよく見える。目が合って恥ずかしそうに小さく微笑む千紘が可愛い。 挨拶が終わると直ぐにそこから降りて、そして体育祭は幕を閉じた。 「お疲れ。」 誉が声をかけてくる。 「ああ······片付けは俺たちの仕事じゃないから、後のことはまた後日にしよう。」 「ああ。俺達も今日は解散だな。」 「帰って早く寝たい。今日は休むぞ。何かあっても連絡しないでくれ。」 そう言うと誉は笑って「わかったわかった」といい俺の背中を叩いた。 きっと千紘はもう帰っている。 俺も重たい足を引きずって寮に戻った。 「ただいま······」 「おかえり!お風呂洗ってもう沸かしたよ!一緒に入ろう?」 「ああ。······千紘、抱きしめていいか。」 疲れた。だから少し癒しが欲しい。 腕を広げると千紘が駆け寄ってきて俺を強く抱き締めてくれる。ああもう、可愛い。 「······ねえ、偉成のじゃない匂いがする。」 「今日突然オメガが発情したんだ。その介抱をしていたから、それで匂いが移った。」 「早くお風呂入ろ。その人には申し訳ないけど、その匂いをつけてる偉成は嫌。」 服を掴まれてそのまま風呂場に連れて行かれる。服を脱がされて、浴室に押されて入った。 「着替え持ってきてない」 「いいのー!他の匂いが嫌だから、早く洗って!」 「わかったから押すな」 シャワーから出るお湯を勢いよく、顔に掛けられた。

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