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第151話 偉成side
***
7月に入ると千紘の体調がだんだんと悪くなって行った。
「俺、太った······。」
そう言って体を撫でているけれど、それは発情期が近いからなんじゃないかと思う。
「大丈夫だよ。発情期が近いからそうなっているだけ。」
「······うん」
それに気持ちも少しナーバスになっているようで、ちょっとした事で落ち込んだり腹を立てたりしていた。
「千紘、しんどいのか?」
「ううん。ほら、明日からテストなのに集中力もたなくて······。」
「少しずつすればいい。そんなに考え込まなくてもいいと思うぞ。」
千紘のフェロモンの匂いが微かに香る。俺も抑制剤を飲んでおかないと。
「んー······何か、体変······。」
「それも発情期が近いせいだろう。俺もお前も抑制剤を飲んでおこう。テストはちゃんと受けた方がいいからな。」
「うん。」
抑制剤を用意して千紘に1錠渡し、一緒に飲んだ。
「偉成、ちょっとだけキスして。」
「ああ」
千紘の頬を撫でてキスをする。
舌を絡ませる。粘膜が擦れて気持ちいい。キスだけで体温が上がり、このまま蕩けてしまいそうだ。
「っは······いっ、せい······」
「ん、気持ちいいな。もっとキスしたい。いいか?」
「ぁ······だ、め······。もっと欲しくなっちゃうから、もうだめ。」
確かに、発情期が近いんだ。まだ薬も効いていないこの状況だと、微かに香るフェロモンのせいで止められなくなるかもしれない。
「テスト勉強、頑張る。」
「ああ、一緒に頑張ろう。」
なるべく柔らかく笑って、千紘の頭を撫でた。
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