158 / 876

第158話

*** あれから約1週間。 やっと発情期が終わった。 ろくにご飯も食べれていない。だるくて仕方の無い体を起こして、まずは風呂に入ろうと、泥のように眠る千紘の肩を揺らす。 「千紘」 「ん゛ん······」 部屋が精液臭い。それに汗の匂いもする。カーテンと窓を開けて、換気をすると素肌には風が少し寒かったようで、千紘が眉間に皺を寄せ、布団を手繰り寄せて小さくなった。そんな千紘の隣に腰を下ろす。 「千紘、風呂に入ろう。」 「······やだ」 返事をした千紘の声が酷く掠れている。そりゃああれだけ泣いたんだ。声だって枯れるだろう。 「腹も減ってるだろ。何か軽いものを食べよう。」 「······まだ、寝る······腰痛いから、無理······。」 そう言う千紘の腰を撫でてやる。それが気持ちいいのか「もっと」と甘えてくる千紘が可愛い。 「無理させて悪かった。」 「······無理じゃないよ。ちょっと、疲れただけ。」 「首は?痛くないか?」 「······うん、大丈夫。······俺達、本当に番になったんだね。」 千紘はどういうつもりでその言葉を言ったのかはわからない。けれど表情は切なげだ。もしかすると後悔しているのかもしれない。 「嫌、だったのか······?」 「あっ、違う、違うの。嫌なんじゃなくて、何だか······殆ど記憶が無いから、あんまり実感がなくて······。」 体を起こした千紘が俺にもたれ掛かる。 「でも、すごく心が満たされてる気がする。それに偉成の匂いが濃くなって気持ちがわかりやすくなったかも。今は偉成からちょっと不安ででも嬉しいって匂いがするよ。」 「······お前は嬉しそうだな。そんな匂いがする。」 夏の朝日は白くて眩しい。 部屋は明るくて、幸せを感じる。 「早く風呂に入って体を洗おう。シーツも変えないと。」 「······でも、多分まだ俺立てないよ。」 「俺が連れて行くからいいよ。」 そっと千紘を抱っこすると、慌てたように俺の首に腕を回す。そのまま風呂場に運んで、2人で一緒に風呂に入った。

書籍の購入

ともだちにシェアしよう!