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第161話 千紘side
学校が終わり、実家に帰る。
寮から出て駅まで俺を送りに来た偉成はまだ寂しいらしく、別れてもすぐに会うっていうのに不機嫌そうな顔をしている。
「そんな顔するくらいなら見送りなんていらないのに。」
「······見送りはしたいけど寂しさが勝つんだよ。······キスしていいか?」
「······いいよ。」
人がいるけど、まあ許してあげる。俺も本当は偉成と離れるのは寂しいから。
「んっ、ん······んー!」
でもキスが長い。俺の顔を包む偉成の手をペシペシと叩いて離させた。
「長いっ!」
「それだけ離れるのが惜しいんだよ」
「またすぐ会えるから!······またね。」
「ああ、またな。ちゃんと会いに行くから。」
「うん、待ってるね。」
駅で別れて、俺は電車に乗る。
ここからしばらくかかってやっと着く実家に、少し待てば偉成がやってくる。
「部屋の片付けしておかなきゃ」
しばらく電車に揺られ、やっと着いた家からの最寄り駅。
「千紘ー!」
「あ、母さん!」
母さんが車で駅まで来てくれていた。その車に乗り込むと途端に「それで?その、偉成君は格好いいの?」と聞いてくる。
「格好いいよ。本当にすごくね。」
「いいわねぇ。千紘にそんな素敵な人が······。」
「挨拶に来る日、父さんもいるんだよね······?なんか······不安だなぁ。」
「父さんは何でも否定的だから。何か言われても気にしないでいるのよ。あなたも、偉成君もね。」
それはわかっているつもりだけど、気にしないで入れるかどうかは分からない。酷いことを言われたら俺だって言い返す覚悟だ。そう思いながら、1度頷いた。
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