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第171話
こんな高そうなところ、高校生が入るべきじゃないと思う。
「千紘は指が細くて綺麗だからな。こういう物の方が似合うと思う。」
「でしたらこちらもオススメです。」
「ああ······綺麗だな。」
左手の薬指。サイズまで測られて······。いや、綺麗で可愛いし、こんなのを貰えるのは嬉しいけど······。
「結婚指輪は早くない?」
「早くないぞ。もう結婚することは決まってるんだからな。」
「······そう」
いつ決まったんだろう。······ううん、わかってた。普通は番の契約をすることは結婚するって言うのとほぼ同じだから。一生離れることができないのが番。更には俺達は運命の番だから、離れたらどうなるのかもわからない。
「千紘、これはどうだ?」
「綺麗······偉成とお揃い?」
「ああ。俺は千紘の手にはこれが1番似合うと思う。」
「うん。ならこれがいいな。」
偉成の選んでくれたものがいい。
だんだんと俺も乗り気になってきて、指輪をつけたまま偉成と手を繋ぐ。
「じゃあこれにしよう。」
「うん」
嬉しくて偉成の手を引いて背中を屈めさせ、ちゅっと触れるだけのキスをする。人前だからって気にしない。だって愛してるって気持ちは沢山伝えたい。
「今日は積極的だなぁ。そんな千紘も大好きだぞ。」
「ふふっ、ありがとう。」
そして指輪を購入した偉成。金額は思っていたより高くて、卒倒しそうだったけど、兎に角「ありがとう」を言い続けた。
「本当にありがとう」
「いいんだ。千紘がそれだけ喜んでくれて嬉しい。」
「······っ」
今すごく心臓が締め付けられるみたいにキュンキュンした。
「さてと······明後日は俺の実家に行く予定だが、それまではホテルでいいか?」
「うん」
「なら、他にも着替えを買わないとな。全部置いてきただろ?」
「うん。でも勿体ないから安いの買う。」
「何を言ってる。千紘の肌を完璧に守るものじゃないとダメだ。特に下着はな。」
下着なんてどれも同じだと思うんだけど。そんな言葉は口にはせずに偉成の言うことにウンウンと頷いた。
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