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第180話

「心配するべきなのは優生の方だろうが。こんなに殴られてんだぞ!!」 「っ、だってその子はオメガで······」 「オメガなんて関係ねぇ!!······優生はもう2度とこの家には帰らねえ。あのクソ兄貴にも言っておけ。次優生に触れたら殺すぞ。」 そう言って家から出ていく匡君。 一体どこに行くんだろう。······いや、それよりもどうして僕の家がわかったんだろう。ああ、そうか。今はGPSっていう機能がある。 「匡君」 「あ?」 イライラしてるのがわかる。 運転手さんのいる車に乗り、匡君がひと言「出せ」と言うと車が動き出した。 「た、助けてくれて、ありがとう······っ」 「······そんなのはいいんだ。それより病院に行こう。酷い怪我してる。」 「痛いけど······まだ我慢できるよ。僕······昔、もっとお兄ちゃんを怒らせたことがあってね、その時よりはマシだもん。」 「そういう事じゃねえ!」 ガッと肩を掴まれる。痛みで顔を歪めるとその手が離れた。 「悪い······。優生、お前は自分をもっと大切にしろ。兎に角病院に行く。怪我を見てもらえ。······中には出されてないか?」 「うん、多分······。その前に、助けてくれたから。」 そう言うと匡君は安心したのか深く溜息を吐いた。 「話は後にしよう。疲れただろ。」 「······ありがとう」 不思議と涙は溢れてこない。 まだ現実に頭が追いついていないみたいだ。 しばらくすると病院に着いて、お風呂で体を洗われ、怪我の処置をしてもらった。それから他の科に回されて、望まない妊娠はしないよにと一応の為、薬を処方された。 「優生」 「は、はい······っ」 顔がガーゼだらけになってる僕は恥ずかしくて匡君の方を見れない。 「俺の家に行くぞ。今日からは暫く一緒に住もう。俺がお前の家族に優生はもう2度と帰らねえって言っちまったから、物は全部俺が用意する。」 「そんなのいいよ!」 「良くない。俺が用意するから、お前はしばらく休むこと。」 病院のお会計もしてくれて、そのまま、また車に乗り匡君の家に行く。 大きなマンションの一室。 そこについて玄関に入り、部屋に上がった途端、足から力が抜けて床に座り込んだ。

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