181 / 876

第181話

「優生!」 「······ぁ、ごめん、力が抜けちゃって······」 「······リビングまで運ぶ。掴まってろ。」 また抱っこされてリビングに移動し、ソファーに座らされる。 「······今までよく頑張ったな。」 そう言われて頭をポンポンと撫でられると、さっきまで出なかった涙が溢れ出た。それはどれだけ拭っても止まらなくて、子供みたいにわんわん泣いた。 匡君はそんな僕に何も言わず、優しく抱きしめていてくれた。それがすごく嬉しかった。 *** 「助けてって言ってくれたから、家まで行けた。もし優生がそこで我慢したなら、俺は行けなかった。」 「······そりゃあ、そうだよね。······あ、それより、気持ち悪い声聞かせてごめんなさい。」 気持ちが落ち着いて、匡君が入れてくれた紅茶を飲みながら話をする。 匡君は首を左右に振って「気にするな」って言ってくれた。 「悪い。本当ならしばらく一緒にいてやるべきなんだろうけど······今から買い物に行ってくる。家の中のは好きに使ってくれていいから。腹が減ったら冷蔵庫に何かしら入ってるし、勝手に食べてていいからな。」 「······買い物、行くの?」 「ああ。食材も買わないといけないし、ほら、優生の着替えもな。しばらくここで住むんだ。色々と揃えないと。」 匡君がそう言って家を出ようとする。咄嗟に服を掴んで「やだ······」と言葉を落としていた。 「優生?」 「やだ······行かないで。1人にしないで······。」 心が疲れてる。誰かに縋りたい。 甘やかしてくれる人、僕が甘えても怒らない人にそばにいて欲しい。 「匡君、一緒に居て。」 匡君がゆっくりと振り返る。

書籍の購入

ともだちにシェアしよう!