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第182話
「······俺はお前を支えてやれない。助けた時も本当はどうしてやるのがいいのかわからなかった。」
「············」
「行ってくるよ。寝てていいから、ちゃんと休んでおけよ。」
パタン、と玄関のドアが閉まる。
ああ、またふられてしまった。
また、伝えることも出来ないまま。
「ふっ······」
お兄ちゃんに今まで酷いことはいっぱいされた。けれどそれよりずっと心が痛い。
「辛いなぁ······」
匡君は甘やかしてくれない。
ああダメだ、疲れてる。
もう休ませてもらおう。
ソファーに寝転ばせてもらって、目を閉じた。
体が辛い。もうこのまま深く眠って目を覚ますこともなかったらいいのに。
「············」
オメガもアルファも、この世界には少ししか居ない。
あの高校で番はできるのかな。
もっと、匡君以外にもいい人はいるはずだ。その人に積極的にアピールした方がいいのかな。
そんなことを考えているといつの間にか眠りに落ちていた。
***
目を開けるといい匂いがした。
いつの間にか体にかけられていた布団。それを肩まで掛け直す。
匡君が帰って来たのかな。今はご飯を作っているのかもしれない。
僕はまだ眠たくて、2度寝に入ったけど、それもポンポンと体を軽く叩かれて「起きろ」って言われて、直ぐに目を覚ました。
「飯作ったから、それ食べて寝ろ。」
「······匡君」
「ん?ほら、起きれるか?」
温かい手に支えられながら体を起こす。至る所が痛んで、歩くのもゆっくりなのに僕に合わせて歩いてくれる匡君。
「ここ座って」
「ぁ······うん。」
「いけるか?痛む?」
「ううん、大丈夫。」
匡君はすごく優しい。
お兄ちゃんに散々にされて怪我をした後、こんなふうに優しくしてもらえたのは初めてだった。
家はどうなったんだろう。匡君は母さん達にああ言ってくれたけど、あの言葉で直ぐに人間が変わることはないだろうな。もうずっとこの感じで生きてきたんだ。今すぐに変わるのは難しい。
「食えるだけでいいからな。」
「ありがとう」
手を合わせて「いただきます」と挨拶をし、箸を手に取った。
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