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第189話 千紘side

「んー······」 偉成のベッド、そして腕の中で目を覚ます。 偉成はまだ眠っていて、ついつい体にすり寄った。 目の前にある綺麗な肌。唇をつけて軽く吸う。チュッと音がして、楽しくなった。悪戯でいくつかキスマークをつけてやろう。 何度も何度も肌に唇をあてがって、しばらくすると偉成がくすくす笑っていることに気がついた。 「偉成······いつから起きてたの?」 「千紘が起きるより先に起きてたよ。」 「······恥ずかしいじゃんか。起きてるなら言ってよ。」 偉成から離れようとすると、腰を抱き寄せられてそれが出来なくなる。 「千紘、もう1回キスをしろ。」 「······偉成がして。俺ばっかりじゃん。」 「俺にキスされたいのか。可愛いな。朝から俺を煽るなんて······抱かれたいのか。」 「馬鹿······。欲しいのは偉成の方でしょ?でも朝からはダメ。キスだけね。仕方ないからしてあげる。」 「んっ!」 下手くそに触れるだけのキスをする。 偉成はそれでも嬉しいみたいで俺の頬を撫でるとゆっくりと起き上がった。 「起きようか。ご飯を食べて······今日は俺はすることがあるから、千紘は好きに過ごしたらいい。」 「何するの······?」 「ちょっとした仕事だ。」 仕方の無いことだけど、寂しい。 偉成の腕を掴んで「ここにいないの?」と聞くと困ったように笑われた。 「ちょっと出る。夕方には戻るよ。」 「······寂しいよ」 「悪いな。でもどうしてもしないといけないことだから。」 「······わかった。」 気持ちがぐんぐんと下がっていく。 だけど偉成に蕩けるような優しいキスをされて、頑張って我慢することにした。

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