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第190話

朝ご飯を食べると偉成は直ぐに出かけてしまった。 「千紘さん、一緒にお料理しない?お菓子を作るの。パウンドケーキよ!」 「お菓子······でも俺、料理すごく苦手で······足を引っ張ると思います。」 「あら、私もよ。だからシェフが隣にいて私達に教えてくれるわ。」 「シェフ······。あ、それなら俺······料理を習いたいです。寮で時々俺がご飯を作るんですけど、美味しいか不安で······。」 不安を口にするとお義母さんはニッコリ笑って俺の両肩をトンっと軽く叩いて掴む。 「じゃあそれも、一緒に特訓しましょう!私も料理は苦手で······。私達2人の大切な人それぞれに美味しい料理を振舞ってあげましょう!」 「本当ですか!やったぁ!」 お義母さんと計画を考えて、お義母さんがシェフに話をするのを横で聞いていた。シェフも「楽しそうですね」と言って何を作るかを一緒に考えてくれることになった。 「あ、千紘さん、そう言えば聞きたいことがあって······。」 「はい、何ですか?」 パウンドケーキの準備をしていると、お義母さんが突然そう言ってきた。 「匡と同じクラスなんでしょ?あの子、どんな感じかしら。私達とは連絡も取らなくて······。」 「匡は······初めは正直、なんだこいつって思ったんですけど······今ではすごく頼りになる友達です。俺は匡が居ないとテストでも赤点ばっかりとると思うし、平和に暮らせてなかったと思います。」 正直に話すとお義母さんは優しい表情になる。 匡と何があったかは知らないけど、やっぱり母親なんだ。子供のことは気になって仕方が無いだろう。 「そうなのね······。貴方に優しくできているならよかったわ。あの子は周りにも自分にも厳しい子だから。」 「そう、なんですかね。それなら俺は甘やかされてると思います。」 小さく笑いながらそれを伝えるとお義母さんも同じように笑ってくれる。 偉成が居なくて寂しい気持ちになっていたけれど、お義母さんは暖かくて優しいから、夕方までなら余裕で我慢できるかも、と少しだけ思った。

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