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第191話

パウンドケーキに晩御飯まで作り終わった。 それと同じ頃に偉成が帰ってきて、着ていたスーツのジャケットを脱いだ。 「千紘ぉ······」 「お帰りなさい。」 力なく抱きついてきた偉成を抱きとめて、背中を撫でる。 「ちょっと疲れた。キスしてくれ。」 「キス好きだねぇ。」 ちゅ、と頬にキスをする。それから唇にキスをすると嬉しそうに笑う。 「今日は俺とお義母さんで晩御飯作ったんだよ!」 「そうなのか。楽しみだな。」 「ふふっ、そうでしょ?だから早く手洗って服を着替えて。まだご飯の時間は早いから少し休んでもいいけど······。」 チラッと偉成を見上げる。するとニヤリと笑って俺の顔を優しく両手で包んだ。 「寂しかったんだろ?素直に言え」 「······寂しかったけど、お義母さんと料理してたから我慢できたもん。」 「可愛くないな。」 「······嘘だよ。寂しかった。」 正直に言うと、偉成がくすくす笑って俺の頭を撫でる。 「素直で偉いな。よし、今から晩御飯までお互い触れ合ってようか。」 「触れ合う?エッチなことはしないでよ!」 「約束は出来ないな」 手を洗い、服を着替えた偉成は、俺を膝に乗せてソファーに座る。 「千紘」 「なぁに」 「今日は、実はお前の実家にまたお邪魔してきた。」 「えっ······」 優しかった空気がピリッとしたものに変わる。変わったのは俺のせいだけど、いやいや、やっぱり違う、偉成のせいだ。 「何で······っ」 「父さんも言ってただろ?千紘のお義父さんにしっかりと話をしないと。」 「でもそんな、勝手に······!」 「千紘に行くって言えば反対するだろうから、黙って行った。悪い。」 先に謝られちゃ怒れない。 唇を噛んで「勝手なことしないで」と呟くように伝えると「悪い。」ともう1度謝られる。

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