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第192話
「······成果はあったの?」
「いや、今日はなかったな。」
「······今日はってことは······また行くわけ?もう勝手に行くのはやめて。止めないから、ちゃんと教えて。」
俺を抱きしめて「わかった」と言った偉成。俺の機嫌を直そうとしてるのか、髪や頬を沢山撫でてくる。
「千紘怒らないでくれ。」
「······怒ってないよ」
「嘘だな。怒ってる。千紘は怒った時唇が尖る。今もそうだ。」
「······じゃあ、怒ってる。」
唇をムニムニと摘まれて遊ばれる。
「やめてよ」
「可愛いな。このままキスしていいか?」
「今キスされたら嫌いになりそう」
「······それは困る。」
手を離した偉成にまた「ごめん」と謝られる。
「千紘のお義父さんに理解して欲しいんだ。その為に話をしたかった。だから頼む、許してくれ。」
「······うん、許すよ。」
俺の為にしてくれた事だ。俺が許さないのはおかしい。
「もう怒ってない。だからちょっと昼寝しよう。俺、疲れちゃった。」
「そうか。俺も少し疲れたから、ちょっと寝るか。」
抱きしめられたまま、ソファーに倒れ込む偉成。
「わわっ!危ないよ!」
「暖かい。このまま寝れそうだ。」
「バカ!危ないから降ろして!」
偉成の上に乗っかるような体勢。こんなので寝れるわけがない。
「千紘の心臓の音が聞こえて心地いい。」
「でも、これじゃ寝れないよ。」
「それはそうだな。······でも気持ちいい。少しだけここにいてくれ。」
今日は頑張ってくれたんだ。少しくらい甘やかしてあげてもいいよね。
偉成の胸に頬をつけて息を吐く。
「少しだけね。」
「ありがとう」
偉成は優しい。
俺も少しくらい優しくならないといけないな、と思った。
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