193 / 876

第193話 優生side

匡君のお家に住まわせてもらってからしばらく経った。 僕の体の怪我はだいぶ良くなり、痛みも引いて普通に生活できるくらいにまで回復した。 晩御飯を食べて、お皿を片付けようと席を立つ。 「優生、片付けはいいから風呂入ってこい。」 「いや、僕が片付けするから、匡君がお風呂入りなよ。ずっと面倒見てもらってるから!」 「お前は怪我人だろ?それくらい俺がする。」 「もう治ったもん」 意地を張って匡君に詰め寄ると、小さく溜息を吐いて「わかった」と言って立ち上がった。 「少しでも痛んだら置いておいたらいいから。」 「大丈夫だよ!」 「······わかったわかった。」 呆れたように頷いた匡君だけど、でも本当に大丈夫なんだもん。どちらかと言えば匡君が過保護なんだ。 そういえば、匡君に伝えないといけないことがあった。 多分、一緒に生活しているならとてつもなく大切なこと。 「匡君」 「ん?」 「僕ね、言ってなかったんだけど······今月に発情期くるんだ。」 「はっ!?」 驚いて固まり、俺をじっと見た匡君は、今度は大きな溜息を吐いて机に手を着く。 「何で言わないんだ。抑制剤を用意したりしないといけねえし······」 「だって、こんなことになるって思ってなかったし······。」 「······なあ、そろそろハッキリしよう。」 唐突に匡君がそう言い出して、落ち着いていた空気にピリッと緊張が走った。 「俺に言いたいことがあるんだろ。いつも言えないでいるのは知ってる。俺もお前に言いたいことがあるんだ。だからお互いにちゃんと話をしよう。」 「······匡、君」 「言わないと辛いこともある。それは分かってる。だから、な?」 「っ······」 言ってしまえば楽になることもあるのかな。 僕の場合、伝えたら終わってしまう気がする。 「話、しなきゃだめ······?」 「話そう。変にお互いに気を使っても疲れるだけだ。」 ぐっと歯を食いしばった。 「わかった。でも······僕が話したからって、嫌いにならないで。」 「ならないよ。約束する。」 その言葉を信じて、ゆっくりと頷いた。

書籍の購入

ともだちにシェアしよう!