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第196話

「寝るんだろ?」 「ね、寝るよ!寝る!」 「あ?おう。寝るぞ。」 匡君は緊張しないのかな。 「優生?」 「っ、緊張して······」 「緊張?······あ」 匡君も気付いたようで、途端に視線を泳がせ始めた。 「匡君······」 「まずい。緊張が移った。」 「どうしよう······僕、ソファーで寝るよ。」 「はっ!?それはダメだろ。なんで今まで一緒に寝れたのに急に······普通逆だろ。」 「だってぇ······」 意識したら恥ずかしいんだもん。 ベッドのそばまで来ていたけど、そっとリビングのソファーまで逃げようとしたら、それより先に手首を掴まれた。 「うわっ!」 「寝よう」 そのままベッドに倒れこまれて、俺も一緒に寝転んだ。背中から抱きしめられたまま、動けなくなる。 「っ、匡君······っ?」 「何だよ」 「は、恥ずかしくて、寝れないよ······!」 「俺だって恥ずかしい。でもこうでもしないといつまでも一緒に寝れなくなるだろ?」 匡君の吐息が首にかかる。 首輪をしてるからそんなに気にならないと思ったのに、ダメだ。気になっちゃう。 「ほら、寝ろ。」 「〜っ、う、ん······。おやすみなさい······。」 「おやすみ」 そのまま、ぎゅっと目を閉じる。 抱きしめられてる体が熱い。 「優生」 「んっ、何?」 「心臓の音がすごい。」 「言わないでっ」 顔を手で覆う。 「可愛いな。」 「っ!」 「あ、またトマトか?」 「もう寝て!」 部屋は電気を消してくらいから色なんてわからないはずなのに。 「優生が寝たら寝る。おやすみ。」 「······おやすみなさい。」 緊張するけど、今は早く寝ることがこの緊張から回避できる唯一の方法だ。 体から力を抜いて、そのまましばらくして眠りに落ちた。

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