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第197話

*** 朝起きたら匡君が目の前にいて、穏やかな寝顔に胸がときめいた。 「格好いい······」 頬っぺに触りたいと思って、手を伸ばす。でも触れる前に手が止まった。 本当に、僕なんかが触っていいのかな。悩んでいると僕の手の上から手を重ねて、自らの頬にを当てる匡君。 「お、起きてたのっ?」 「······今起きた。触りたかったんだろ?」 「ぅ······そう、だけど······」 「そんな躊躇う必要あるか?」 手が離れて、匡君が状態を起こし、ベッドヘッドに背中を預けて座った。 「まあ俺も、お前に触るのはドキドキするけど。」 「······同じだよ」 「そうか。そういうことなら躊躇っちまうな。」 まだ眠たいのか、そのままこくこくと船を漕ぐ匡君。眠いなら寝たらいいのに。 「匡君?眠いなら寝たら?」 「······起きねえと、今日は課題するつもりだし······。」 「匡君って本当見た目によらず真面目で優しいよね。」 「おい、褒めるなら褒めるだけでいいんだよ。」 匡君に頭をグリグリと撫でられる。 それがやけに気持ちよくて、目を閉じると「寝るなよ」と言って匡君が小さく笑う。 「ご飯食べよう。」 「うん」 ベッドから抜けて、先に顔を洗いに洗面所に行って、それからリビングに移動する。 「あー······悪い。昨日米炊くの忘れてた。パンでもいいか?」 「もちろん!僕も手伝うよ!」 「別にいいぞ。ぼーっとしていても」 「ううん、やる!」 キッチンに行って渡された食パンをトースターに入れる。 「ジャムかバター塗る?それかスクランブルエッグでも作ろうか?」 「ううん、バターでいい。」 「わかった。」 お皿を用意して、匡君と一緒にパンが焼けるのを待つ。 「あ、僕、匡君の作ってくれるカフェオレ飲みたいな。」 「ああ、作ってやる。」 匡君の作るカフェオレは美味しいんだ。 カフェオレを作っている姿をぼーっと眺める。 ああ、なんて幸せな朝なんだろう。

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