199 / 876
第199話
課題を終えると、優生は疲れたようにソファーに倒れた。もしかして寝るのか?さっき起きたばかりだけれど。
「優生?疲れた?寝るのか?」
「······疲れたけど、寝ないよ。匡君とお話したい。」
「話?」
「うん。匡君のこと、もっと知りたいな。」
小首を傾げてそう言ってくる。ああ、可愛い。そういう姿はまるで小動物みたいだ。
「俺の事?何が知りたい。」
「えっと······ほら、お兄さんのこととか、あと······どうしてここで1人で暮らしているの······?」
「············」
聞いてくることは可愛くはなかった。正直ピリッと胸に痛みが走ったけれど、そりゃあ誰だって高校生の俺が1人でマンションに住んでいたら不思議に思うだろう。
「······話さないとダメか?」
「······ううん、話したくないならいいの。匡君が傷つくなら、聞かなかったことにして。」
「っ······、話したくないわけじゃない。嫌なんじゃないんだ。ただ惨めな気持ちになりたくないだけだ。」
「惨めな気持ち?何で?匡君は素敵な人だよ。だからそんな気持ちにならなくていいよ。」
そうは言われても、どうしてもそんな気持ちになってしまう。困ったなと苦笑を零すと「ごめんね」と謝られた。
「何も知らないのにこんなこと言ってごめんね。」
「いや······」
「もし話せる時が来たら教えて欲しいな。あ、無理はしないでね。」
「ありがとう」
今話さなくて済むと思うと楽だった。
その代わり、何も話すことが思いつかなくて、そのまま固まってしまう。
恋人に、なったんだよな?
恋人同士って何を話すんだろう。何をすればいいんだろう。全くわからない。
「優生」
「うん?何?」
「な、何されるのが嬉しいんだ。実は俺······恋人とかできたことがないから、分からなくて······。」
恥ずかしいけど、聞かなくて間違えるよりずっとマシだ。
書籍の購入
ともだちにシェアしよう!