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第204話

そしてしばらくするとお義父さんが帰ってきて、俺を見るや否や嫌そうな顔をした。 そりゃあそうだ。連日息子の番が家に来たら好ましい関係であってもうざったいだろう。 「今日も千紘のことを話しに来たのか。」 「はい。少しでも理解していただきたくて。」 「理解?オメガのことを俺が理解できるか。」 「できます。アルファの俺でもできたので。」 少し喧嘩を売るようにそう言ってやった。最近覚えたのだ。この人は挑発されやすい。それで話に乗ってくれるなら尚、有難い。 「ほぉ?なら俺にだって理解できる。アルファよりベータの俺の方がオメガに近いからなぁ。」 「そうでしょう。オメガに近いベータの貴方が、俺よりも千紘を理解できないわけがない。それに千紘は貴方の息子だ。」 「······確かにそうだ。俺に千紘の何を解らせたい?」 その言葉を聞いて、1つ1つ説明をした。 千紘がどうして白樺学園に入ろうとしたのか、そして俺との交際のこと、今はどうしているのかも。 「元々は本当にただの就職だと思っていたみたいですけどね。あの学園に通う者達の中では就職の意味が違う。その点では千紘君は俺以外のアルファにも好かれていた。どちらにせよ苦労する道を選ぶことは無かったでしょう。」 「······その千紘の努力を無下にするなと?どうせ発情期が来れば誰彼構わず淫らに誘う事になっていた。」 「そんなことは無い。千紘君なら最後まで抵抗したはずだ。この人にならいいって言う相手じゃないと、そんなことはさせない。」 高良との事を無かったことにはしていない。千紘は本当に高良と俺との間で悩んでいたから。 「千紘に謝ってください。もう2度と千紘にひどい事を言わないと誓ってください。」 「······無理だな。本人がいない。」 「いないんじゃなくて、来れないんだ。貴方が千紘に酷いことを言ったから。あの日から千紘の精神は不安定になっている。」 1人になることは嫌だと言う。前からもそう言うことは何度か言われたけれど、今回ほどでは無い。 俺がいない時は母さんが見ていてくれているからいいけれど、本当は少しでも千紘の心が楽になるようにしてやりたい。 「謝ってください。千紘を傷つけないで。」 「············」 「貴方、千紘に謝りに行きましょうよ。貴方の言葉で千紘が傷ついたのは本当なのよ。私達は親なんだから、本来は千紘の味方にならなくちゃ!······ね?そうしましょう?」 お義母さんが諭すようにそう伝えると、お父さんは渋々といったように頷いた。

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