205 / 876
第205話 千紘side
「な、なんで······!?」
「何が、何でだ?ああそれより、ただいま。」
「おかえり······違う!何で、何で父さんが!?」
いつもより早く帰ってきた偉成がジャケットを脱ぎながら「ご両親が来てるぞ」と何でもない様子で伝えてきた。
「何しに来たの!」
「千紘に話に来たんだ。ついでに俺の両親にもな。結婚はする予定だが、お互いの親の同意も必要だろう。」
「······偉成、気付いてるかはわからないけど、勝手すぎ。俺の気持ちはどうなるの?」
「勿論、俺が癒してやる。」
「巫山戯てる?それならもう2度と話さない。」
「巫山戯てないぞ!本気だ!」
偉成がすごい剣幕で迫ってきた。驚いて退きそうになったのを肩を掴まれて抑えられる。
「2度と話さないなんて、そんな寂しいことを言うな!」
「······ごめんなさい」
「わかってくれたならいいんだ。ほら、用意をして。ご両親が待ってるから急ごう。」
服を着替えさせられて、急いで部屋を移動した。
「千紘!」
「か、母さん······」
部屋に入ると途端に母さんに抱きしめられた。
そして母さんの向こうには父さんの姿。
「千紘······」
「と、うさん······」
心臓がドキドキする。俺を抱きしめていた母さんの服をぎゅっと掴んだ。
「千紘、行っておいで。」
偉成に背中をトン、と押されて父さんの前に出る。
「父さん、あの······」
「すまかったな。」
「え······」
「お前の気持ちも考えず発言してすまなかった。」
と、父さんが謝ってる······!
その事実に驚いて固まることしか出来ない。
「千紘と偉成君のことは認める。自分の思うようにすればいい。」
前も同じようなことを言われたけど、前回と今回じゃ全く意味が違う。
自然と涙が溢れてくる。
父さんって、ちゃんと謝ってくれる人で、息子の俺を本当は理解してくれる人なんだと分かったから。
書籍の購入
ともだちにシェアしよう!